幸福の王子と異常な涙腺

2004年11月06日
『幸福の王子』
 原作:オスカー・ワイルド

かつて幸福に人生を終え今は立派な黄金の像となり街に立つ王子と、群れからはぐれた一羽のツバメの物語である。好きな絵本の一つ、いや一番好きな絵本作品かも知れない。

内容をご存知の方はへたな要約の色付き部分を飛ばしてスクロールしていただきたい。


−−幸福の王子−−

ツバメは南の国へと渡る旅の途中だった。

ふと立ち寄った街の中央には、黄金の像がそびえ立つ。

かつてそこで幸福に一生を終えた王子の像だった。

羽を休めるツバメは、晴れた夜の一滴の雨粒にふと王子の顔を見上げる。

それは雨粒ではなく、金色に輝く王子の嘆きの涙だった。

「街の人々がこんなに貧しさに耐えていたなんて僕は全く知らなかった。」

話を聞くツバメに王子はある使いを頼む。

「街のはずれの貧しい婦人に私の剣のつかのルビーを届けてくれないか」

ツバメは王子の願いを聞きいれる。

 −・−・−

ツバメにはすでに辛い寒さだった。

明日こそはと思いつつ、ツバメは日々王子の願いを聞き入れていく。

次の日もまた次の日も、宝石や金の欠片を人々に届けていく。

「寒さは辛いけど、なぜだか体が温かくなりますよ。」

ツバメはすでに南へと渡るには遅すぎることを知っていた。

 −・−・−

そしてとうとうツバメは力尽きてしまう。

最後に残った力でやっと羽ばたき王子の肩に乗ると言った。

「私はもう旅立ちます。

南の国へではなく、死の国へだけど。

さよなら、愛する王子様。」

王子は言った。

「君は長居しすぎてしまったね。

私も君を愛しているよ。」

ツバメは王子のくちびるにキスをして、足元に落ちた。

その瞬間、像の中で何かが壊れるような奇妙な音がする。

鉛の心臓が二つに砕けた音だった。

 −・−・−

すっかりみすぼらしくなった王子の像は台座から取りはずされることになる。

新しい像の材料を作るため、その体は溶鉱炉で溶かされてしまう。

炉の中に溶けずに残った二つの鉛の固まりは、無造作に町外れに捨てられた。

そこにはツバメの亡がらも横たわっていた。

 −・−・−

神様は天使を使わせる。

「街で最も貴いものを二つ持ってきなさい」

天使は鉛の心臓とツバメの亡がらを天国の庭に届けるのだった。



幸福の王子
 原作:オスカー・ワイルド
 訳文:中山知子
 挿絵:アンヘル・ドミンゲス、テオ・プエブラ
 「小学館世界の名作10」版

子供に読んで聞かせるのは非常に苦労する作品である。
ツバメが王子にキスするシーンはさらりと読めたことがない。

最初に読んで聞かせたのはかなり早過ぎた。
子供には涙どころか何の反応も無かった。それでも聞かせたくて聞かせたくて、涙をこらえ読んでいた。

親の自己満足だろうか

実際親と同じ反応をするかなど、全くわからないし、期待すること自体が親の身勝手なのかも知れない。

花を見て
「綺麗だね!」というのか

その花の横を轟音を立てて通りすぎるバイクを見て
「カッコいいね!」というのか

考えてみれば、これからどんな反応をしていくのか、半分ほどは親次第とも思えてくるが、逆に半分でも親の価値観を受けとってくれたら十分だろうとも言える。

父「私はこの作品が好きだ!君はどうかな?」

同じものを見て

同じ感想を抱きたい

これが本音には違いない。

  −・−・−・−・−・−

それにしても、
初めて読む作品ならまだしも、何度読んでも涙してしまう作品というもの触れる度に思う。私の涙腺には学習効果といった言葉は存在しないのか。

この記事を打っていて再び泣いてしまった私の涙腺は過敏すぎるのだろうか。

誰か教えていただきたい。

−・−・−・−・−・−・−・−

--追記---
この記事を投稿するにあたって、あらすじを簡単に添えるつもりだったのだが、絵本というもの最低限に簡略化されているからか、どの部分も省きづらかった。
知らない方にこそ知って欲しいあまりに少々内容を書き過ぎたかも知れないが許していただきたい。
--追々記---
ちなみに私が読んでいたは中山知子氏文の「小学館世界の名作10」版なのだが、記事投稿現在手元にはなく要約は青空文庫(サイト)内の結城浩氏訳を参考にした。
posted at 2004/11/06 16:30 | Comment(2) | TrackBack(1) | 絵本批評
この記事へのコメント
このお話しは子供の頃に読みました。そして、ドラマで「幸福の王子」っていうのが数年前にあって、そのドラマの中で、このお話しがちょっと出てきました。親が感動した事を子供に伝える事は、素敵ですね。親が感動したものを必ずしも子供も感動するとは限らないけれど、それを伝えようとする気持ちって大事ですよね。
Posted by minan at 2004年11月08日 03:00
>minanさん、こんばんわ!
伝われば嬉しいですね。
でも期待してはいけないこととも思っています。

結局は別の人生を歩むのですから。

ただ、
友達だって、同じ映画を見た時に似たような感想を抱いているのを知ったらそれはきっと嬉しいはず。

そんな風に、「同じ」価値観とは言わず、「似た」価値観を持ってくればいいなぁと思います。
Posted by 映太郎 at 2004年11月08日 03:15
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学習する涙腺への感想
Excerpt: 映太郎さんのブログはすごい。普段本はあんまり読まない、という彼の一体どこからこんなにたくさんの言葉が湧き上がってくるのか。 そんな彼が、何度読み返しても感動するというオスカーワイルドの「幸福の王子」に..
Weblog: 二亀堂
Tracked: 2004-11-10 21:48
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