MOMAでMONO選ぶ人々

2005年07月21日
カメラはゆっくりと美術館の中を散策していた。ふと映し出される三つのモノ。そこにあること自体がトリビアのようなモノたち。

 ・ポストイット
 ・レンズ付カメラ
 ・ルービックキューブ

あまりにありふれたモノが、そこに静かに鎮座する“ここ”は一体“どこ”なのか。NHK中條誠子アナウンサーが、なにやら“モマモマ”言っている。
 
 MoMA ニューヨーク近代美術館 
  ―Museum of Modern Art in New York―

わざわざ見ようなどとは思いもしなかった番組も、ふとCMのように何気なく見せられると、結構興味をそそられるものである。

NHKハイビジョン特集
「ニューヨーク近代美術館」第二回
〜格闘するミュージアム・20世紀後半のアート〜

ぅぅぅ、録画しとけばよかったかなぁ…などと迷えば迷うほど、録画しなかった悔いが画面から溢れてくる。ぅぅぅ。



カメラは“同時代ギャラリー”という部屋に入った。

キュレーターの女性が、そこに並ぶ鑑賞者を悩ませるような作品たちを鑑賞する際に望まれる鑑賞姿勢を語った。

「どの作品が好きでどの作品が嫌いかを、感じて欲しいのです。作品に決まった解釈など、どの作品にもないのです。」

たしかに、その通りだと思う。

幾ら作品の良し悪しを論じられても、なんとなく好きになれない絵画だってあるだろうし、例えそれが美術学校一年生の描き掛けのデッサンだって、何度も観たくなるような親しみを感じることさえあるだろう。

良し悪しの目では見ず、好き嫌いの心で観る。

そんなことはとっくの昔から考えていたことなのだ。だがそんな言葉を、あらためてキュレーターの口から語られるのを耳にすると、何かふと安心してしまう。そんな鑑賞姿勢を語るキュレーターたちの選んだ作品が並ぶこの美術館、ちょっと観てみたくなってきた。



カメラはふとある作品を映し出した。

男性の下半身だけがうつ伏せに横たわっている。実物大ほどのベルトから下の二本の足は、ありふれたズボンにありふれた靴下、ありふれた靴を履き、ありふれた格好をしている。だがその両足の上に所々キャンドルが立っている。

理解に苦しみ始めた私に、女性キュレーターは作品の解釈など説明してくれない。だが、その不思議な作品が芸術足りうる理由を教えてくれた。

「なぜこれが芸術かというと、想像の産物だからです。」

ふむ、“想像の産物”ということが、芸術の一つの基準になるというのか。まぁそれをさらに拡大解釈すれば、人の産み出したモノはすべて芸術と言えるのだろう。

花がそれほど美しくても芸術とは言えない。だが、その美しさを誰かが誰かに伝えるため、写真、絵、俳句、小説などなど。いやそれどころか、その人が何かを意図して何かを創り出したとしたら、その何かはその瞬間に芸術となる。

芸術って一体どこからどこまで含まれるのだろうかとずっと悩んでいたことが、女性キュレーターの言葉でふっと晴れた気がした。



カメラはふとネガのような暗い絵を映し出した。

バストショットの女性が描かれた一枚のポートレートは、この美術館に収集されるべきかで、キュレーター同士でも意見が分かれたと言う。

「そこらの路上でポートレート描いて小遣い稼ぐ画家の絵とどこが違うのだ」などといった厳しい意見もあったものの、結局は過半数の賛成を得て収集されたらしい。

その時、その絵を率先して薦めたと思われる男性キュレーターは、作品収集に対する姿勢を語った。

 ・率直であること
 ・批判的であること
 ・自分の考えを常に疑うこと

その姿勢自体も少々矛盾している気がするが、何者にも頼らずモノの価値を見出そうとする真摯な鑑賞姿勢とも言えるかも知れない。



キュレーターという稼業、不思議な職業である。そもそもどんな意味なのか。

≪Yahoo Dictionaries≫
 キュレーター=curator

欧米の美術館において、作品収集や展覧会企画という中枢的な仕事に従事する専門職員。わが国でいう学芸員よりも専門性と権限が強い。
[大辞林/三省堂] 

curator〔名〕
1 (博物館・美術館の)館長,学芸員,キュレーター
 (動物園の)園長,管理人,支配人;監督.
2 《英》(Oxford大学の)幹事,評議員.
[プログレッシブ英和中辞典第3版/JapanKnowledge]

この言葉、最近あちこちで使われているがどれも何かを選び出す人といった意味で使われている。だが、動物園の管理人までも含まれるとは意外だった。

まぁどちらかと言えば、動物園で日々動物を世話する係りというより、アフリカなどに出掛けて珍しい“種”を探し出し買い集める人という意味が強いのだろう。あの白いヘルメットのような帽子が似合いそうな、“収集家”とも“探検家”とも呼ばれる人のことかも知れない。

ところで、あたらしい仕事が脚光を浴びるとしばらくして必ず登場する場所がある。子供たちの「将来なりたい職業ランキング」である。キュレーターという仕事、このランキングに登場する日も来るのだろうか。

“大学病院のお医者さん”や、“M&Aをするような社長さん”なんてモノより、よほどカッコいいと思うのだが。
posted at 2005/07/21 18:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 放送批評
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