寡黙なアンジュールの色と心

2005年07月11日
その絵本に色はない。

素朴なデッサンの荒いタッチは、その世界の犬のように飾り気がなく、寡黙な彼の気持ちを補う言葉さえ携えていない。

アンジュール―ある犬の物語 ガブリエル バンサン (著)アンジュール
―ある犬の物語―

ガブリエル・バンサン著

だが、その犬の悲しき泣き声が聞こえ、孤独なため息が伝わり、言葉なきはずの彼の声が聞こえてくる。
 


私はこの絵本を本屋で立ち読みし、恐ろしく後悔したことがある。弱い涙腺を自覚していたのにも関わらず、絵本コーナーでこれを見つけ、その場で最後まで読んでしまった私は顔が上げられず、しばらく立ち尽くしてしまった。

絵本の素晴らしさを思い知らされた。というよりも、絵本の、それも言葉を排除した単なる絵集の、思いもしなかった饒舌さやある意味力途轍もない表現力に恐ろしささえ感じたものだ。

買わずとも、一度でいいから本屋で立ち読みならぬ立ち鑑賞して頂きたい作品である。私の場合たった一度の立ち読みでそのストーリーを知り、その結末や感動を味わい、一瞬にして生涯忘れえぬ物語になったのに、結局は買って手元に置いている。

犬好きの人ならあの愛しきヨダレの香りまでが漂うことだろう。
posted at 2005/07/11 16:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 絵本批評
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