甘くアダージョな弦楽曲たち

2005年07月05日
たまにはジャケ買いしたくなるようなアルバムをアソシエイト・リンクにと思ったのだが、ふと思い浮かんだアルバムはおよそジャケ買いとは縁のないものだった。

スパルタクス/ガイーヌバレエ組曲「ガイーヌ」より
≪ガイーヌのアダージョ≫

アラム・ハチャトゥリアン指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

その中の一曲、「ガイーヌのアダージョ」の弦楽が堪らなく美しい。クラシックの音楽ファンでなくとも、SF映画のクラシック「2001年宇宙の旅」を知っているなら、必ず聴いたことがあるはずの郷愁の旋律である。
 
ジャケリンクどころか、肝心なアソシエイトの紹介頁さえ見つからなかったが、しかし今時こんなアルバム、売っているかも定かではない。まったく…、アソシエイトになりゃしない。

そんな古臭いアルバムにはハチャトリアンとプロコフィエフのバレエ組曲が計三曲収録されている。ハチャトゥリアン:バレエ組曲「スパルタクス」、バレエ組曲「ガイーヌ」、そしてプロコフィエフ:バレエ組曲「ロミオとジュリエット」作品64。

実際私には他の曲などどうでもよい。ハチャトゥリアンのバレエ組曲「ガイーヌ」の中の「ガイーヌのアダージョ」だけが聴きたくて見つけたアルバムだった。この曲の静かな弦楽が堪らなく好きだ。

SF映画「2001年宇宙の旅」の中で、宇宙船ディスカバリー号飛行士デビッド・ボウマンとフランク・プールが過ごす果てしなく孤独な日々。その淡々とした船内の生活シーンにこの曲が静かに流れていた。

2001年宇宙の旅2001年宇宙の旅

地球との一方的なテレビ電話の画面の中で、その距離の分だけ過去となってしまう家族たちの笑顔。その途方も無く無情な故郷との距離感に、この曲の寂しげな旋律が重なる。郷愁漂う弦の音色は抑揚も少なく、どこか見放すような冷たさまで感じられる。



聴き直してみると、このゆっくりとして少しまったりとした叙情的な雰囲気は、あの“マラ五”にも通じるところがある。マーラーが彼の愛人とのまさしく「愛を交わす時間」を弦楽に表現したあの曲。

マーラー第五番 嬰ハ短調
第四楽章
―きわめてゆるやかに―アダージェット

マーラー第五番マーラー第五番 嬰ハ短調

ベルナルト・ハイティンク指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

官能的な第四楽章は様々な映画でも使用されとても有名

ベッドの上で交わされる愛人との“愛の交歓”の時間を、一人の作曲家がクラシックの楽曲に表現するとどんな音色の管弦楽になるのか。そんな音色にもし少しでも興味を持ったなら、この13分ほどの第四楽章を聴くためだけにこのアルバムを買ってみて欲しい。それが例えたった数秒のフレーズだとしても、ある作曲家のある曲のある部分を聴くためだけにCDを買うなんてことも、ある意味粋なことでもあるし、時にはそれくらい軽い姿勢でクラシックを聴いて欲しいものである。クラシックが嫌いな人にこその話であるが。

それはともかく、私の好みはどうもアダージョなのではと思えてきて、他に何かあっただろうかと考えてみた。名前など普段あまり意識して聞かないからそう簡単には浮かばないが、無理して思い浮かべるとふと浮かんだのはアルビノーニのアダージョくらいである。少々ありきたり過ぎて情けない。

ところでこの“マラ五”、映画「ベニスに死す」に使われたのが有名らしいが、私には岩井俊二監督の映画「フライド・ドラゴン・フィッシュ」の方が馴染み深い。

FRIED DRAGON FISHFRIED DRAGON FISH

岩井監督は(先に紹介したものとは異なるが)この曲のアルバムを芳本美代子に持たせ浅野忠信にプレゼントさせる。浅野忠信はこのレコードを掛けると床に寝転び、クラシックの聴き方を芳本美代子に語る。

「音楽って、体で聴くんだよ」
芳本美代子は微妙な顔で納得する。

かつてドデカいスピーカーで聴いていた頃が懐かしい。その頃ならまさしく体で聴いていた。だが最近の人はみな耳で聴いているようだ。そりゃ耳で聴くのは当たり前なことではあるが、ヘッドフォンで聴く姿は耳だけで聴いているとしか思えない。体で聞くのは、物色している間のCDショップくらいだろう。

かく言う私も現在まともなオーディオでは聴いていない。聴かせてくれるのはテレビのスピーカーだけである。あぁたまにゃ背丈ほどもあるスピーカーで聴きたいものである。CDを片手に秋葉原でも散歩してみるしかないのだろうか。

試聴と称してなら体で味わうことができそうである。
posted at 2005/07/05 11:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽批評
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