かつては僕らも「ANGEL-A」

2007年05月26日
 ふと思った。その映画を観て…。

ANGEL-A アンジェラ by リュック・ベッソン






 ANGEL-A アンジェラ
  byリュック・ベッソン 
 

 かつては僕らも、あの天使のように誰かに遣わされて降りてきたのかも知れない。

 だが…、私が云うあの天使とは、スーパーモデル、リー・ラスムッセン演じたアンジェラのことではないけどね。
 
「天使A」なんて邦題になりそうな映画「ANGEL-A」は、だらしない一人の男の嘘に満ちた自慢話で始まる。

 モノクロのパリの空の下。借金を払えずヤクザに追われ続けた挙げ句、その空のように救いのない日々に嫌気のさした男は、ふと橋の上から身を投げようと川面をみつめ、そして恨みがましく空を見上げる。

 気がつくと傍らに一人のブロンド女性が同じように立っていた。

「何してんだよ!」
「あなたと同じことよ!」

 躊躇っている彼を横目に、一足先に飛び込んだ彼女。死のうとしていたはずの彼は思わず彼女を助けてしまう。

「目的があって助けたんでしょ。 
 あなたの為に、何でもしてあげるわよ」

 そして彼女は、その容姿を利用して、彼の心に浮かぶ最も恥ずべき行為で金を稼いでゆくが…。

 彼女を連れ、男があらためて借金したヤクザを訪れるシーンのと或るカットがとても洒落ていて脳裏に焼き付く。
 あーだこーだと文句を云う彼を彼女が諭す場面、ふとその場にあったサモトラケのニケ像が彼女にふと重なるカットは堪らない。

 モノクロの静かな画面にさりげなく映しだされるパリの史跡や街並の重ね方は、つい先日もまた観てしまった「ベルリン天使の詩」を思い起こさせる。天使の詩パリ編ともいうべきか。

 さて天使の詩東京編はいつ誰が作ってくれるのだろう。



 それにしてもこのリュック・ベッソンという監督、「グラン・ブルー」「フィフス・エレメント」「TAXI」「レオン」…と、彼の作品で裏切られたことはまったくないが、この作品でも同様の満足感が得られた。

 まぁ満足できそうもない作品は観ないで避けているってことでもあるのだけれど、そこそこの期待は必ず裏切らないところ、まったくすごい監督である。

 まぁ若干不満もないわけではないけれどね。

 この「ANGEL-A」のラストシーン、「あ〜ぁ…、その台詞を彼女に言わせちゃうのかぁ…」などと、少々不満が残ったのも事実である。

 あの台詞を云わせずに終わっていれば、観客の受け止め方だって数倍に広がったはずなのに…。もったいない。

 とはいえそんな風に、結局の処は観客の受け止め方など、監督の意図を無視してあらぬ方向へと必ずや彷徨うもの。結局の処の結局の処など、映画なんて単なるキッカケにすぎないのだしね。

 人が進むべき方向を迷った時、右と云う占い師にケツを押されて右へ行く者もいれば、信じられない占い師にケツを向け己を信じて左に行く者もいるということ。

 かく云う私、映画「ANGEL-A」を観て、ふと天使の登場するあの童話を思い出し、ふと再び天使というものを考えてしまった。



 童話のラスト。涙なくしては読めないラストの一節で、天使は神に遣わされ地上に舞い降りる。


 神様は天使を遣わせる。

「街で最も貴いものを二つ持ってきなさい」

 天使は鉛の心臓とツバメの亡がらを天国の庭に届けるのだった。

全編の要約は記事「幸福の王子と異常な涙腺」→リンクで。


 あぁ、ふと思う。僕らはかつて、童話「幸福の王子」のラストに登場するあの天使のように、誰かに遣わされてどこからか降りて来た天使だったのかも知れないな。

 遣わされた目的の物を見つけられた者はさっさとどこかに帰ってしまったようだが、後に残るは、目的のモノが何だったのかをさえ忘れてしまった者たち。

 自分が何処からやってきたかも忘れてしまった者たち。自分が何をすべきかも忘れてしまった者たち。自分が何処へ還るべきかも忘れてしまった者たち。自分が誰なのかも忘れてしまった者たち。

 還るべき者が還るべき場所に還らないから、世の中どんどん居場所がなくなって狭くなっていく。

 毎年毎年、地球上の人間の人口だけがどんどん増えていくことを考えると、人間の行いがいかに神の意思に反しているか…などとも思えてしまう。



 そのうち、見上げる世界には出前の出払った蕎麦屋のように天使は一人もいなくなり、何が起きようとも誰が天に救いを求めようとも、神は救いの手だてを施す為に誰かを遣わせなくなってしまうに違いない。

 あぁ…、人間がいわゆる“囚人のジレンマ”的な状況を自らの意思と力だけで克服できるのは、一体いつのことなのだろう。

 神に頼っているだけでは、いつになっても克服できそうにない。まぁ、そのジレンマを克服できるくらいならば、そもそも神や天使なんて考え方も必要ないんだけどね。
posted at 2007/05/26 01:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映像批評
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのTrackBack URL
http://blog.seesaa.jp/tb/42916143
※確認及び承認されたトラックバックのみ表示されます。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。