ヒトとスズメの寂しき習性

2005年06月10日
いつの頃か定かでないが、NHKの番組枠がある時期を境に短くなった。

30分、1時間といったきっちりとした番組枠を徐々に縮め、番組終了後から次の番組枠への隙間を埋めるような小さなスポットプログラムが急に増え始めた。国内外民間放送局への番組提供を意識し始めた頃なのだろう。そんなNHKの傾向が露骨にタイトルに現れた隙間時間調整枠的教育スポット番組が結構気に入っている。

NHK教育「10min.ボックス」
≪身のまわりの鳥≫〜友?敵?…スズメ〜

NHK教育らしく、内容は理科系と社会科系に分かれているらしいのだが、先日はスズメの習性を扱っていた。
 


すずめ、スズメ、雀…。
日本人にとって最も身近な野鳥でありながら、彼らは人に決して懐こうとしない。しかし、彼らの生息地は必ず人間の生息域と重なっているという。

番組はちょっとショッキングな映像をも何気なく差し込んでいた。昔のニュース映像のようなモノクロームな夜、畑では広げた網を農家の人々が一斉に巻き取る。団子状に巻き取られた網の中で、小さなスズメたちが必死にもがいている。

一網打尽

ナレーションのたった一言の四字熟語が、その光景を無情に言い切った。誇らしげな男たちの背中の網が、微かな羽ばたきで小刻みに震えている。男達は満足げに笑っていた。

番組はそんな時代を犯人にしていたが、スズメがその時代だけで人を恐れるようになったとは思えない。まぁそれぞれの時代にそれなりの危害を受けただろうが、他の鳥たちとさほど違いはないだろう。にも関わらずスズメたちは人の近くに集まってくる。

その映像の意味を完全に裏返したとしても、彼らの習性を説明できそうである。番組の表現を言い換えよう。

そんな時代があったにも関わらず、スズメはヒトが好きなのだ。嫌われても襲われても、疎まれても食われても、それでもヒトが好きなのだ。付かず離れずこっそりとヒトの近くに現れる。

どこか現代的なヒトの習性を表現しているようである。



待てよ…、そういえば東京ネズミーランドのスズメはなぜか人を恐れない。普段は近寄りもしないスズメがふと目の前に現れ、コチラの様子を伺いながら餌を欲しがる姿は、習性をよく心得ていた私には特に驚きだった。

あのスズメーランドが出現したのはいつだったか…。電脳集合無意識的知識蓄積サイト、「ウィキペディア」でふとその歴史を調べてみた。

東京ディズニーランド
 開園 1983年4月15日

ふむ、ヒトを恐れず平気で餌をねだるディズニーランドのスズメは、1983年以来あの地で餌を得ていたスズメたちの子孫ということになるが、考えてみればたった今始まったことではない。たぶん開園後数年の数世代で、ヒトを恐れぬ特別な集団があの地域だけに発生したのだろう。

その地がスズメに特別であるのと同様、そこはヒトにも特別な地である。

普段は風を切って歩いていそうなアンちゃんも、先生にたてついてばかりのネエちゃんも、どこかの親分さんらしき親分さんも、デスクが窓からはみ出てそうな瀬戸際父さんも、あらゆるヒトがそこでは大人しく優しくなる。

あの地のファンタジックな雰囲気がそうさせるのか、厳しいマニュアルに縛られた係員たちが睨んでいるからなのか、なぜかあの地に足を踏み入れるとヒトは皆穏やかになるものだ。

そんなヒトだけには歩み寄るスズメの姿を見ると、スズメの本来の習性というものがやはり疑わしくなってくる。

彼らは本当はヒトが好き好きでならないのかも知れない。ヒトが好きなクセに、ヒトとの接し方を知らない。本当はヒトが好きなのに、ヒトに近づけない。



ところで、日テレ“田舎的生活のススメ”的番組「ダッシュ村」を見る度に、あんな田舎的生活に私は複雑な憧れを覚える。

 いいなぁ…。
 静かな山ん中に一人静かに送る生活。
 まったくもって羨ましい。

同様の番組を見る度に必ず同様の感想が一端頭に浮かび、そして必ず一テンポ遅れてから現実に戻るのだ。

あんなヒト気のまったくない山ん中じゃ、夜も怖くて眠れない。近くにコンビニもなさそうだし、それに虫嫌いの人間がそんな処で暮らせるわけが無い。

矛盾した実感に毎度しつこく襲われる。

ヒトが嫌いで…、虫が嫌いで…、寂しがり屋で…、そんな人間が“山奥の孤独な生活”に憧れ…、“山奥の虫多き生活”を恐れ…、“山奥の寂しき生活”を諦める…。

まったく…、自分は一体ヒト嫌いなのか何なのか…。そんな事を考えもしようとしないスズメたちが私は好きである。

ダッシュ村もいいが、スズメに親しくなれるあの地も悪くないものだ。そんな彼の地も久しく行っていない。
posted at 2005/06/10 09:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 放送批評
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