笛の音は青き雄のせ伯林へ…

2005年06月09日
彼らはある意味、我ら同胞の勇者であろう。さしずめ11人の青き勇者ってとこだろうか。

その者、青き衣を身に纏い、
 新緑の野に、降り立つべし。

こんな表現を使ってみると、頭の中の声はやはりあの映画の婆やの声にすり代わる。“青い衣の勇者”と例えるだけで、誰もが「風の谷のナウシカ」のラストを思い出しているはずである。

まぁ実際その光景を見守った人々の清清しさというもの、あの映画のあの物語の中で、勇者の登場を見届けた“同胞の民”たちと何ら変わりは無い。
 


残念ながらその瞬間を私は観ていない。人が右を向けば左を向き、誰もが勧めるモノは誰もが見向きもしなくなるまで手を出せない人間である。結果を知った瞬間の感想にしても、“また渋谷ハチ公付近が大騒ぎになっているだろう…”なんて冷めたものだった。

だが…、どこかのニュースが流していたVTRにふと涙が溢れそうになった。試合会場付近の映像の中で、会場建物を必死に応援する一団。

コイツら…、何してんだコイツら一体…。ん?…えっ?、まさか…、君らはそんなことするために、中継も観ずに“その声”を注ぎ込むために、わざわざそこまで行ったのか…、まったく…、まったく…、何んてヤツらだ、まったく…。

会場の入り口付近の映像。その一団はグランドのまったく見えない入り口前で、通路の空間に“力強い声”を注ぎ込んでいる。彼らにピッチは見えるはずもない。彼らに見えているのは、通路天井付近に覗くピッチ上空数メートルの空気だけである。そう考えた途端、画面は潤み私の前の画面のピッチが見えなくなった。

あぁ、これほど純粋な応援の姿を観た事が無い。お百度参りに限りなく近い姿ではないか。

誰か…、気の利いたレポーターの誰か一人くらいは、「あの一団の声ってピッチに届きましたか?」なんて訊いてあげる人はいないだろうかと思った。そして誰か一人くらいは、「いやぁ、どこからともなく応援が聞こえてきましてね、その声で奮い立ちましたよ」なんて答えてあげる選手はいないだろうかと思った。

「応援は聞こえましたか?」なんて野暮な質問をするレポーターなど、今更どこにもいないと思うが、それでもちょっと確かめたいし、そんな問答を聞きたい気分になった。



それにしても、天邪鬼なくせにミーハーな人間というのは実にやっかいである。

 天邪鬼
  ブームはこっそり
   口にして

天邪鬼なミーハーはつねにそういうモンである。万が一思わぬ思いを味わったとしても…、

 思わぬ味も
  口には出来ず

おいそれとは思わぬ感動を口にしないのだ。そんな習性を自覚している人間というのはさらにやっかいでならない。

ところで、思わぬ川柳が一つ浮かんだので、昨日の勇者にもう一つ有名な川柳を贈ってやるかと思いつつ、忘れられない一つの川柳がどうしても思い出せない。相撲の勝ち力士の勇姿を唄った句なのだが、どなたかご存知ないだろうか。

 勝ち力士
  ・・・・までも
   見渡して

“・・・・”はどこかの地名が入るのだがどうしても思い出せない。たしか大阪場所辺りでの勝ち力士が京の町までも見渡しているようだという意味だったと思う。

たとえ勝ったとしても、余計な感情表現が許されない角界である。昨今、明らかに誰かを睨みつけるような横綱もおられるが、まともな力士というものはガッツポーズなどは見せない。

表情一つ変えようとしないそんな勝ち力士も、その微かに誇らしげな視線の先には、遥か遠い地までもが見渡せているようで、そんな控えめな表情に晴れ晴れとした勝者の思いがふと垣間見られるという川柳である。



さて、ガッツポーズどころか露わな姿まで見せてくれるサッカー界に話を戻す。青き勇者たちには、あのホイッスルが鳴った瞬間一体何処の地が見えていたのか。考えてみれば野暮な質問でもある。

 笛の音は
  青き雄のせ
   伯林へ

ベルリンまで見渡すどころか、彼らはすでにベルリンのピッチに立っているのだろう。それも開会式のピッチなどではなく、決勝戦開催の地ベルリンのそのピッチに。

ともかく、天邪鬼なミーハーは小声で囁く。

W杯出場決定おめでとう!
posted at 2005/06/09 05:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 雑題雑想
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