不満も沈むパーフェクトな海

2005年06月05日
この役者、そんなに“濡れ場”が好きなのだろうか。パーフェクトなCGの嵐の中で、これでもかと言うほど海水を滴らせていた。

パーフェクト ストームパーフェクト ストーム

監督 ヴォルフガンク・ペーターゼン
出演 ジョージ・クルーニー
   マーク・ウォルバーグ

水も滴る“ER一のイイ男”を演じたジョージ・クルーニーが海水滴る“海のイイ男”を演じた海洋スペクタクル

そう言えば初めて出会った時もこの男、なぜかズブ濡れだった。私が初めて彼を知ったあの有名ドラマセカンドシーズン。彼はびしょ濡れになりながら少年を助ける。
 
「ER―緊急救命室」2ndシーズン第7話
「地獄からの救出 HELL AND HIGH WATER」
配水管の中で溺れる少年を必死に救助するダグ・ロス。演ずるジョージ・クルーニーはそこでもズブ濡れだった。

確かに、「ER」に出ていた頃の彼はやたらと濡れ場が多かった。いや実際そのマンマのベッドシーンは無くとも、それを匂わせるシチュエーションは一番多かった気がする。しかし、相変わらずどこで見かけても濡れている。

「ER」第7話のあの回のあの緊迫感に引き込まれ、私はドラマ「ER」シリーズに引きずり込まれていったのだった。

緊張感の中で出会った者に、人はふと心惹かれるという話がある。つり橋の上で男女が出会うと、その緊張感を“何かの予感”と勘違いし恋に落ちるというものだ。初デートには動物園のパンダより、遊園地の絶叫マシーンの方が効き目ありと思える話である。

ふむ、ふとチャンネルを回して出会ったあの番組の緊張感に私はどこか錯覚を起こし、あのシリーズにハマってしまったのかも知れない。考えてみればあのドラマ、毎回毎分緊張感が途切れないではないか。ヒットした要因の一つとしてはまったく有りえる話である。

ちなみに「ER」の緊張感といえばこの回が特筆すべきかも知れない。

ER緊急救命室W特別版
Live―East & West

東西に広いアメリカ大陸の東部西部両地域に向け二度行われた「ER」生放送バージョン
ER 緊急救命室 IV ― フォース・シーズン 特別版 Live East & West

役者の緊張感がヒシヒシと伝わってくる上、あちこちにチラホラと見え隠れする一度目と二度目の微妙な違いが間違い探しのようで面白い。



ところで、「パーフェクト・ストーム」というタイトルを検索してみると、その驚くべきCG映像の制作過程を解説してくれるサイトがあった。

ILMでSGIシステムが『パーフェクト・ストーム』の猛威を再現
 ページ⇒リンク
日本SGI株式会社
 サイト⇒リンク

映画「パーフェクト・ストーム」のパーフェクトたる所以は、背景映像CGの完璧さだったというわけだ。ふむ、あの波の映像に異論はない。だが、背景がリアルであればあるほど映画にはのめり込むものの、あのエンディングにはちょっと納得行かなかない。もう少し違った終わり方はなかったのだろうか。

かつて映像論モンタージュ論で学んだ“若きヒッチコックの愚かな失敗”談を思い出してしまう。

テロリストが爆発物を子どもに託すというショートフィルムの中で、監督ヒッチコックはさんざん観客をハラハラさせた挙句に、結局は子ども諸共爆発させ殺してしまう。緊張感のピークに達した観客が突き落とされるような大きな落胆を味わうと、怒りにも近い感想を彼にぶつけたという。ヒッチコックはその時の反省から、あの緊張と緩和が交互に現れては繰り返し、最後には必ず心地よき緩和でまとめるスタイルを完成させたという逸話である。

あの嵐あの状況では、助からない登場人物も何人かはいるのだろうと半ば覚悟を決め観ていると、結局あのゲイル号では生存者はいなかった。辛い。辛いエンディングである。しかし、ならばなぜ一旦海上に顔を出させ観客を安心させるのだ。納得いかない。あの彼女のエンディングの台詞の前フリのためだけに一度助けるなんて…。無常な神様だってしないようなことを、やりおったな。あれだけドラマ仕立てにしておいて、ある意味ある部分だけは中途半端に事実に忠実に従っている姿勢がどうも納得いかない。

ふとあるニュース記事と、この話が事実に基づいていたことを思い出した。
船長の遺族だかが、「彼はあんな人間ではなかった。あんな描き方をされては困る」などとクレームをつけたのはたしかこの映画だったはず。ふむ、納得できない人間は一人や二人ではなさそうである。

この映画の作り方のどこが間違っていたとは言わない。ただ、事実と脚色の境目の線引きがどこか微妙にズレていたのではないかと思えてくる。そのズレ方に遺族も納得できなかったのかも知れない。好きなジョージ・クルーニー主演だから余計に残念でならない。



これだけ酷評しておきながら、私はこの作品を“あの映画”のような映画だとは思わない。納得行かない前フリ台詞をシンクロさせるエンディングの台詞「…さよならとは言わない…」を彼女が桟橋で語るシーンは、それはそれでいいシーンでもあるし。

ただ、人は緊張感の中で接したモノにふと心惹かれる…とはいえ、時と場合と作品にもよるということである。人は無意味な緊張感に無闇にさらさせると、恋どころかトラウマともなりえるのだ。

二度と観たくないと思われる映画は、例え涙を誘うとしても、作品としては“あの映画”のように価値が無い。そういう映画を私は、“あの「ディア・ハンター」のような映画”という。

それにしてもこの映画、“あの映画”のエンディングと紙一重である。一応似て非なるものではあるが…。
posted at 2005/06/05 08:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映像批評
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのTrackBack URL
http://blog.seesaa.jp/tb/4139603
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。