「これ以上コメントしない」

2005年05月25日
その記事はあまりに些細だが、私にはとても重要に思えた。

<細田官房長官>
〜中国副首相帰国「これ以上コメントしない」〜
細田官房長官は25日午前の会見で、中国の呉儀副首相が小泉首相との会談を中止した問題について「これ以上コメントすることは日中関係にとって生産的ではないと考えているので、コメントすることは控えたい」と2度にわたり発言した。…。(Yahoo/毎日新聞2005/05/25/12:47)

映像メディアにとってはそんな“発言無き発言”よりも、官房長官を包むブルーのスナップダウンシャツが重要なようである。
 
どこぞのドタキャン副首相に関してのきつい皮肉や批判発言の温度差を、政治記者は「巧みな役割分担」と表現していた。国内の記者はそれなりにその発言の主と立場を程よく聞き分けている。

だが、そんな公私オンオフ様々な関連発言の多くが、国内メディアを抜け出し、ウェブや衛星を伝い、日本海対岸の赤く不気味な大国の電影機関に届くころには、なぜか最も敵意を感じさせる発言だけがしっかりと蒸留抽出され、さも日本の政治家がみな声を揃えて発言したかのように扱われるものである。

四千年の歴史の国に似合わぬせっかちさと、数十億の人口を抱える大国に似合わぬ小っちゃさが、まったく不安で相変わらず不気味なお国である。



さて話を日本海の手前に戻す。かれこれ官房長官が交代してどれほど経っただろう。

シャープで歯切れがよく半ばクール過ぎるコメントが、私にはとても心地よくかなり信頼していた福田前官房長官が交代した時、記者会見担当長官に就任した現細田氏のたどたどしい言葉使いとどこか煮え切らない風貌が、まったくもって頼りなく思えたものだった。その官房長官が先の発言をしたという。私にはなぜかクールで頼もしく思えた。

とやかくイチャモンをつけ続けるチンピラの前で、正義の味方のごとく拳を振るう男が必ずしも格好イイとは限らない。理由はそんなものだろうか。

どこかの大国をチンピラに例えるつもりはないが、刺激的な発言を渇望している記者たちをさらりと交わす姿は、「相手にするな…」と冷静にその場を収める静かなヒーローにも通じるところがある。メディアになんとか取り上げられたくて「アアーだコーだアレコレだ!」とおべんちゃら吐く男たちとは何かが異なる。

まぁ立場が違うといってしまえばそれまでなのだが、発言が海を越えたころには“立場”なんて肩書きがいつのまにか脱落してしまう恐れを意識できるか否かということにも関わっているだろう。

複数のメディアを渡り歩く情報において、淘汰の優先順位は常に“刺激的か否か”というゆゆしくも嘆かわしい問題である。



メディアの一つが、細田官房長官のふとした気さくな姿勢を映しだしていた。一度退席した会見場にわざわざ再び現れた官房長官が居残る記者のカメラにポーズを取っている。

「先ほどは写真を撮りそこねた社があるということで、大サービスです」

ブルーのスナップダウンシャツが、飾らない姿勢によく似合っている。
posted at 2005/05/25 18:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | 報道批評
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