道に迷って現れるモノ

2007年03月28日
 或る日或る夜の或るドラマ。津川雅彦が教えてくれた。


 道に迷えば地図ができる 
    by ピエール・エルメ 
 

 そんな事は百も承知のつもりだったが、それをたいそうなお言葉として残した方がかつての何処かに居たという事を、カレー屋の怪しきマスター津川雅彦が教えてくれた。
 


 ドラマとは先日日テレで放映されたドラマスペシャル「セレンディップの奇跡」という番組。奇跡、偶然、幸せ、物語、そんな言葉が番組表で好奇心をそそった。

ドラマスペシャル
「セレンディップの奇跡」
 〜偶然が紡ぐ3つの幸せの物語
 2007年03月12日22:00〜日本テレビ

 偶然がもたらす幸せへの奇跡を描く全3話のオムニバスドラマ。ナビゲーターは広末涼子。出演は沢村一樹、金子賢、伊藤淳史、福下恵美、木村佳乃、柏原収史、そして大御所津川雅彦。

 で、内容はと云えば…、・・・・・。

 どこかシンクロニシティを連想させるキーワードに誘われたものの、“小説は事実より陳腐”的な出来過ぎたストーリーはオムニバスと称して三つ連ねたところで、結局のところ期待はずれに終わった。

 スポンサーが某大手携帯会社のイチ押し極薄携帯だったことを考えれば、薄っぺらな内容だったのも仕方なかったのかも知れないな。



 ところで肝心な例の言葉は、たしか第二話に登場するカレー屋のマスターを演じた津川雅彦の台詞だった。

 甘いモノが苦手だという風変わりなパティシエ(伊藤淳史)は、或る日彼女と喧嘩したあげくに部屋を飛び出し、深夜の住宅街を彷徨い歩く。やがて道に迷った彼は一軒の怪しいカレー屋の看板に誘われ、そこで風変わりマスター(津川雅彦)に極辛のカレーを注文する、のだが…。

 何か訳の判らぬ異様な拘りに拘りきっているかのような怪しいマスターは、何かに迷い、そして道にも迷ったパティシエを諭すように、ふと先の言葉を口にする。

「道に迷えば、地図ができるのさ…」

 気絶するほどの極辛カレーを食べたパティシエは、甘さと辛さの間に存在する何かに気づき、深夜の街を満足気に再び帰路につく。…んな話だったかな。



 そう云えば私も若い頃にはよく道に迷ったものだった。

 深夜のツーリングと称しては野郎二人で湘南辺りの道を色々と探索したことを思い出す。知らない道へ知らない道へとハンドルを切り、あっちだこっちだと彷徨いながらも、適当に走っているとやがては思わぬ道に繋がって楽しいものだった。 

 花屋の仕事をしている時もよくあえて道に迷っては新たな方向感覚を鍛えていた気がする。タクシーが大通りから路地へ入り込むと当てもないのによく追いかけていた。

 そんな経験からか、自分より後に免許を取得した人などにはよく偉ぶって似たようなことをほざいていた。

「道を知るには道に迷え」

 今振り返ればそれはそれは大きなお世話な事を偉そうに云っていたものだと恥ずかしくなる。

 だがまぁ所詮人の言葉なんて大きなお世話も格言も聞き手本人次第である。必要ない時には例え偉大な格言だろうと大きなお世話だろうし、必要な時には例え誰かの寝言だとしても、時にかくも有り難きお言葉になるかも知れないのだ。

 耳が素直な時に出会ってこそ、価値ある言葉も価値ある意味になるのだとしたら、要はタイミングなのだろう。

 色々と道に迷ってみないと、耳を澄ましても価値ある言葉は聴こえてこない。

 人生のベン図式を埋め尽くすには、未知なる森に自ら迷い込み、道また道と歩み続けるしか道はない。
 歩むほどに迷うほどに論理積は範囲を狭め、様々な経験の色合いは混じり合って限りなく黒へと濃度を増し、円弧に囲まれた複雑な形はいつしか小さな影となっていく。
 やがてその中心に現れた影は点となり、歩み続けた者のみにその執着の源を露にする。
 自分が何に興味を覚え、何に執着し、何を求めているのかを、その点が教えてくれるだろう。
by 映太郎 

 どんな経験だろうと、試せば試すほどに自分も知らぬ自分の執着の源が見えてくるってこと。
 まぁ要するに、本にしたって音楽にしたって映画にしたって何にしたって、とりあえずは読んでみろ!とりあえずは聴いてみろ!とりあえずは観てみろ!ってこと。

 ま、それはそれは巨大なお世話なんだけどね。



 薄っぺらな携帯がスポンサードしてくれた薄っぺらなドラマも、企画者の意図せぬところでふと思わぬ価値が現れたが、ドラマの中でカレー屋のマスターが口にしたピエール・エルメという人が一体どんな人物なのかはいまだに判らない。

 とはいえ、ふと番組表を迷ったあげくに観たドラマの中で、そんな言葉を口にした人が他にも居たのだと教えてくれたことには違いないのだから、それも一つの偶然の奇跡として、そのドラマには一応感謝しておくべきなのかも知れない。

 あ〜ぁ、これだけ長々と書いたブログの記事にしたって考えてみれば似たようなものなんだろうな。興味のない人にはどうせすべてが大きなお世話でしかないのだし。
posted at 2007/03/28 01:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | 放送批評
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