小池 真理子著『沈黙のひと』

2012年12月01日
 2012年12月1日、こんな本を読んだ。

小池 真理子著『沈黙のひと』/文藝春秋社/単行本/AMAZON



 
 沈黙のひと

 小池 真理子著
 文藝春秋社/単行本
 
 パーキンソン病を患い、沈黙のうちに亡くなった父。遺された文書と手紙には、絶望に直面してもなお、家族や恋人への愛、短歌への情熱と共に生きたその揺るぎない足跡が刻まれていた―。圧倒的な人間讃歌。生きるとは?死ぬとは?家族とは?著者渾身の感動作。(作品紹介)


分厚い本は当然ながら重く、内容も重い。きっと読み応えも相当…と思ったのに。

なぜか読み終えて爽快。おかしいな、相当覚悟して読んだのに、読み切ったらなぜか気分がここ数年感じたこともないほど爽快。



 新刊本の並ぶ平積みコーナーで、ふと手に取ってしまった。相変わらずの無為な書猟に無為な選択。

タイトルにそれほど惹かれたわけでもないのだけれど、何気なく手にしたこの本の帯に印刷された紹介文だけで、何処か全身を鷲掴みされたようにその場を動けなくなった。後は、すっかり買う気になっていた脳ミソを、厚みと重みを肌で感じた両手が引き留めていた。

かなり厚い、かなり重い。そしてそれ以上に重そうな内容。でも読みたい。いや、読まなければ。
私は考えるのを止めてレジに走った。うぅぅ、値段もそれなりに重かった。

四百頁近くあるのに、一気に読み終え、そして不思議な爽快感。

てっきり○○小説だと思っていたのに、最後の二頁で覆される。

そう言えば、何処かの書評だか作家評で、○○小説が得意だとかなんだとかと書いてあったのだった。ふむ、なんか判る気がする。○○小説としての最後の二頁にむけた三百六十八頁だったのかあと、妙に納得。

まだ今年は一月残っているけれど、私はあえてこの一冊を今年の一冊と選ぶ。

注…○○はネタバレになるので一応は内緒。



 神戸のと或るホテルのモーニングはイタリアンレストランだった。窓際の四人掛けテーブルに腰掛け、朝7時をやや回った神戸の通りを眺める。ビュッフェで盛ったスクランブルエッグとべーコンとブロッコリサラダとマッシュポテト、そして小さなピザトーストを摘みながら最終の数頁を読んだ。

 空になった皿はいつのまにか片付けられていた。コーヒーをもう一杯おかわりした頃か、本は最終の二頁に差し掛かり、ふと危険な予感を感じる。うっ、やばい。最後の父の文面に涙腺が軽く疼き、私は慌てて本を閉じ、一人になる為に自室に戻る。

room number 314

 まさか、隣の席で朝食を取るフランス人ファミリーの前であわや号泣なんて、まさかできないし。
posted at 2012/12/01 08:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍批評
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