追想詠歌十二首 喜連川

2012年10月08日
 追想し、詠う歌、十二首。
 

  追想詠歌十二首

     喜連川
                 海馬 馨

   父の地を名乗る電話に覚悟消ゆ
      伝えし母の声伴って

   紫陽花も桜も眠る坂行けば
      独り横たう影 喜連川

   警官が安置所と呼ぶガレージに
      パトロールカーとストレッチャー

   ジッパーが開かれ「間違いありません」
      閉じられ「お世話になりました」

   末期髭 突き刺さるまで頬撫でて
      那珂川の空に 親指なぞる

   カビくささ ホコリくささに ヤニくささ
      笹に埋もれし 終の山小屋

   御坊の目 盗み棺に安酒を
      ぶちまけ空箱 炉前に供す

   集骨の知らせ待つ身を濡らす雨
      茂る竹藪 ゆらゆらと鳴く

   降り積もる父の執着焼き捨てて
    荼毘に付されし 便所蟋蟀

   モンブラン 父のインクを濯いでも
    同じ緑を新たに満たす

   父無き世なんら変わらぬ日常に
    我が髭さする 親指の腹

   死に様の遺伝子有りを覚悟する
    同じ道なら何も厭わず


 
 形見の筆手に追想尽きず。どこまで増えることやら……。
posted at 2012/10/08 03:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | 語部修行
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