スーパーショットを観る人々

2005年04月12日
B「マスターズ観たかい?」

映「あぁ、面白かったな」

B「それにしてもタイガー・ウッズのあのチップインショットは凄かったなぁ。何度も観ちゃったよ。あれこそがいわゆるひとつの“魅せるショット”ってプレーだろ」

映「あぁ、散々見せられたよ。確かに凄かった。あれこそまさしくいわゆるひとつの“見せるショット”ってモンだな。しつこく何度も見せるしな、あのマークを…。その筋じゃきっと金メダルモンのショットだな」

B「あんなスーパーショットは当分観れないよ」

映「いやぁすぐに見せられると思うよ。あれほどの映像は、まず数十年に一度観られるかどうかってモンではあるが、まぁそれを裏返せして考えればさ、これから数十年間はあの映像を“過去のスーパーショット”として見せられるってことだろう。あのマークとともに」

B「あのマーク?」
 
映「そう、あのマーク。そういう見方をすればあの映像は『さすがタイガー・ウッズ』ではなくて、『さすがナイキ』ってことでしょ」

B「『さすがナイキ』? あれ入れたのは誰だと思ってんだ。タイガー・ウッズだろ!」

映「まぁね…。あの映像を観て『さすがタイガー・ウッズ』と人はみな言うだろうけど、やっぱそんな彼とあのボールにあのマークを貼り付けたナイキこそ『さすがナイキ』って評価される映像だな」

B「…」

映「最後に止まりかけたあのボールを入れたのは誰だと思う?」

B「そりゃ勿論彼の実力と彼の強運だよ」

映「ふむ、彼の実力は認めるよ。だが、運を語るなら彼だけの強運ではないだろう。あのスーパーショットがそもそも誰のモノか。あのスーパーショットとあの映像は一体誰のモノなのかってことだよ」

B「そりゃ勿論タイガー・ウッズだろ?」

映「スポーツニュースを何度も観てるとさ、あのボールが一旦止まりかけた瞬間、たぶん何百万人もの視線の先のボールの下からあのナイキマークがちらりと顔を出すでしょ。なんだか象徴的だよね。ナイキマークが下から持ち上げてるようでさ」

B「そんなこと全然気にしてなかったな…」

映「実際あのボールも、あのボールを打ちだしたクラブも、そのクラブを振り出した彼の手も腕も肩も筋肉すべてにさ、あのナイキのマークが付いているだろうしね」

B「…、あのさぁ。君はそんな風にゴルフトーナメントを見てんの?」

映「あぁそうだよ。世界の名立たるスポーツトーナメントなんてすべて同じ。すべては広告スポンサーたちの広告業界トーナメントだからね」

B「広告業界トーナメント?」

映「いいか、筋肉だけじゃないんだぞ。媒体の中で目立つプレーヤーの体はな、すべて彼らのモンなんだよ。筋肉どころか、その筋肉に指令を出している脳みそまでが彼らのモンなのさ」

B「脳みそ?」

映「あぁ、脳みそだよ」

B「…」

映「だってさ、脳みそが被ってる帽子にもナイキのマークが付いてるだろ」

B「そんな見方して面白いの?」

映「一応ね」



安芝居は以上である。

あのスーパー(モノ凄い)ショット(映像)を散々見せられた私にとって、今一番興味があるのはあの映像が広告素材として画面に現れるまでに、一体どれくらい時間を要するかって問題である。たぶんすぐにでも見られるのではと思うのだが…。

かつてF1のあるレースで見た絶好のシーンは、しばらく経ってから広告素材として画面に再登場した。シェルの広告だった。

シェルがスポンサードするマシンを、同じくシェルがスポンサードするマシンが、(要するに同じチームのマシンだとは思うのだが、)直線で追い抜く瞬間を真上のヘリから撮影した映像だった。

 シェルを抜き去るのはシェル

そんなコピーだったと思う。それはある意味象徴的な広告だった。そこには、あらかじめ用意されたコピーは存在しない。ある特別な映像がコピーもコンセプトも必要とせずに、それらを飛び越してそのまま広告になったようなものだった。

 事実は小説より奇なり

あとから貼り付けたようなコピーも、そんなことわざを自慢げに掲げているようである。

 事実なんだからしょうがない

そこにあらかじめコンセプトがあったのか、なかったのか、私は知らない。だが、その映像が事実だったということは知っていた。それが事実だと知っている人間にとって、反論の余地のないコピーである。

そういう意味では、あの時のマシンのスポンサーにとってあのヘリからの映像というモノも、F1ではありながら“スーパーショット”だったと言えるはずである。



そういえばヤンキース松井選手のホームランでも似たような象徴的な映像があった。一年目の彼が打ったある特大ホームランは、KOMATSUの看板へと飛んでいった。

 コマツ、イメージキャラクターに、
  NYヤンキースの松井秀喜選手を起用

2003年度シーズンより掲出している看板は、同スタジアム右翼方向の「アッパーデッキ」と呼ばれる3階スタンドに設置。4月14日、対ブルージェイズ戦6回に松井選手が放った推定140メートルの特大決勝3ランがコマツの看板の真上に飛び込んだことは、国内外のメディアでも大きく報道され、話題を呼びました。
コマツプレスリリース2003年05月01日→リンク

MATSUIとKOMATSU、文字の配列もなんとなく似てることだし、アメリカ人の目に焼きついたことだろう。

彼とKOMATSUがスポンサー契約した話は知っていたが、契約の話とこのホームランがどちらが先でどちらが後だったのか、私には定かではない。とはいえスポンサーにも運不運があり、中には強運のスポンサーもいるということに違いない。

スポンサー契約をしたプレーヤーがどんなプレーをしどれほど活躍してくれるか。そんなことは誰にもわからないが、ファンよりも一喜一憂していることは間違いなさそうである。

タイガー・ウッズ
 そしてヤンキース松井秀喜

彼らのスポンサーは先見の明に優れていたとも言えるだろうし、そしてある意味では他のスポンサーよりもはるかに強運であったとも思える。

打った瞬間に松井選手が契約選手だったかは別として、あの特大ホームラン映像もKOMATSUにとってのいわゆるひとつの“スーパーショット”だったと言えるはずである。
posted at 2005/04/12 08:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 広告批評
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