“不安定”こそ生きている証

2006年05月13日
 常連さんのコメントを読んでいたら、ふと考えてしまった。

 まぁその手の格言らしきモンを、思いつくまま気の向くままに自分流に吐いては他人に押し付けるのが嫌いではない。

 すべての存在というもの、それぞれが常に不安定に振動を続けては熱を発し、他の存在には自らの振動とその熱を伝播し、そしてやがて振動を止め、熱を失っては再び無へと消えていく。

 その振動とその熱とが存在の証ならば、不安定こそ生きている証拠となろう。裏返して考えるならば、存在が安定した途端、その存在は熱を失い、そしてその瞬間存在は無に変わる。

 不安定こそ生きている証。

by 狩馬 映太郎

 「マグノリア」のせいかも知れぬ。

 よせばいいのに再々度のレンタルで、毎日毎晩繰り返し観ている。この記事を書いている最中にも、―きっと今回のレンタルで十数回目に当たる―カエルの雨が轟音を立てて降り出し、画面は自らの雨で再び歪み始める。
 


 マザーテレサはかく語ったらしい。

 すべての存在はそこにあるだけで宇宙に受け入れられているのです。

 そこに最大の価値があります。
by マザー・テレサ

 Risuさんが教えてくれた。

 そんなこと、云われてみれば至極当然のことである。まぁ格言や著名人の言葉なんてそんなモンである。

 ありきたりで、当然過ぎて、誰も口にしないようなことを改めてもっともらしい言葉にする。

 不意に忘れてしまい、一人孤独に不安定な状態に陥ってしまった人々の耳にいつかどこかで届くようにと、人から人へ、耳から耳へと、語り継がれ囁かれ続けられるべく音に文字に姿を変えたありふれた真実。

 そんな言葉に、時には励まされ、時には叱られ、そして時にはそっと涙を拭われる。

 43年モンのひねくれモンは、そんな偉大な言葉の偉大な母親にまで噛み付く。

 「判ってらぁ〜! そんなこと…。」

 ちなみに、教えてくれた人には噛み付かない。



 だが…。 

「あぁ…、でもなぁ…。」

 自分勝手に気まぐれで浮かんだ自分の言葉の方に、自分自身が言いくるめられ、自分自身が納得の底に堕ち始める。

「そうだよなぁ…、
 不安定な状態こそ、まさに生きている証かも知れんのだ。」

 少々欝な気分がいまだに余韻を残す今、自身の不安定な思考がふと方向性を自らの言葉とは反対の方へ変えつつあることに気がついた。安定した不安が、いつしか不安定な不安へと陥っていく。

「ふむ、“安定した状態”では一体どんな気分なのだろうか。それはどれほど楽だろうか…。」

 日本海溝の底を掘り返した泥の中のように静かで、製氷工場の倉庫で眠り続ける売れ残りのドライアイスの下の床のように痛いほど冷たく、そして、田舎の資料館で誰も驚かなくなって忘れられた琥珀の中の虫の体内のように身動き一つとれないほど固形化された状態。

 “安定した状態”とは、一体どんな気分だろうか。

 そんな場所に置かれたお気に入りの緑のソファーにゆったりと腰を沈め、濃い目のアールグレーを飲みながら、飽きるほど目を瞑りたくなるほどに「マグノリア」を観たくなってきた。

 カエルの豪雨が、そんな処にまでも降り注ぐまで…。
posted at 2006/05/13 01:18 | Comment(2) | TrackBack(0) | 死生私観
この記事へのコメント
「あっ! イタッ!!」
「あれえ、気のせいかしら?なんか耳も痛〜い。」

映太郎さん、こんばんは。

『“不安定”こそ生きている証』

ハイ! お師匠さまに従います。
私も思春期(笑)ならではの憂鬱を抱えて葛藤の日々を送っております。
この不安定な私の心こそ、大いに生きている証なのですね!?
嗚呼、「マグノリア」観てみたくなりました。
Posted by Risu at 2006年05月13日 23:32
葛藤、憂鬱、後悔、反省、開き直り、そしてさらなる葛藤…。不安定な揺らぎあってこそ、生きている証…、なのかぁ…。

揺らぎもない白熱電球よりも、微かな風にも今にも消えそうに揺らぎながら淡い光を放ち続ける蝋燭の炎にこの上ない親しみを感じる理由が、たった今判った気がします。

Risuさん、毎度です!
思秋期の私の憂鬱は、まだまだ続きそうです。

ちなみに映画「マグノリア」で、私が最初に反応したシーンは、元天才少年ドニーが泣きながら警官に想いを訴える辺りでした。

I don't know where
to put things, you know?
I really do have love to give.
I just don't know where to put it.

自分の抱いていたままのセリフを吐かれると、つい余計に感情移入してしまいますねぇ。
Posted by 映太郎 at 2006年05月14日 07:03
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。