サウイフ記事が頭から離れず…

2006年04月27日
 数年前のと或るニュース突然思い出して以来、似たような記事ばかり書いている。

 それをどうして思い出したかなんてキッカケなどはどうでもよいのだけれど、深層心理の海から表層意識の浅瀬に何年ぶりかで漂着した大きな記憶は、岸を離れてはまた岸へと、波に揺られながら私を揺さぶる。

<電車事故>
―ホームから転落、助けようとした計3人死亡 山手線―
 26日午後7時20分ごろ、東京都新宿区百人町1のJR新大久保駅で、男性がホームから転落し、この男性を助けようとして線路に降りた男性2人の計3人が、山手線内回り電車にはねられた。3人は間もなく死亡した。
(2001年01月27日/毎日新聞)

 ふとそのカメラマンと韓国人留学生の二人の名前を忘れていたことに気付き、あらためて記憶に留めたくなり静かに慌てて検索する。
 
 韓国人留学生…李秀賢(イ・スヒョン)氏
 カメラマン…関根史郎氏

 「あなたがたのことは決して忘れません。」

 誰もがそう思ったはずなのに、いつのまにか忘れていた。



 人は大切な人を失った時、決してその人のことを忘れたくないと想うものである。そういう人がいたことを忘れてしまうなんて、大切な人を失ったこと以上に、それこそ最も悲しく寂しいことのように思えるからなのだろう。

 だがしかし一方で、いくら努めても人は忘れる生き物である。
 例え幼子を失った母親ですら、時が経つにつれ一瞬また一瞬と、そして一日また一日と忘れられる時を増し、日々悲しみは癒され、平穏に過ごせるようになっていく。そしていつしか、薄れ逝く記憶は別の何かに、ゆっくりと昇華されていく。

 極端に例えるなら、人間は忘れられるからこそ、機械にはない感情というモノを持ち、人間らしい人間としていられるのかも知れない。

 機械のように記憶し続け何も忘れることのないサバン症候群の人々を、まるで人間ではないとでも言っているかのような例えでもあるけれど、ある意味サバン症候群の人の感情面がどこか希薄に感じられることと、まるで機械のように“忘れることができない”ことを絡めて考えてみれば、人間の人間らしさを垣間見るヒントに思えてくる。



 ところで、忘れたくないとか忘れてしまうとかいった話とはまた別に、興味深い考え方を耳にしたこともある。

 何教の何宗だったかは幸運にも忘れたが、たしか宗教人の話だった。

 「故人の写真は仏壇に飾ってはいけません。写真を飾ると、生きている者、残された者の執着が消えませんから…。」

 生きている者、残された者が故人に執着すると、彼らは成仏しにくいという話であった。

 生を離れあの世に旅立った者は、生への執着から解き放たれ、辿り着くべき場所へと向かわなければならない。しかし、残された者見送るべき者が故人にいつまでも執着していると、次の段階へと進めないのだという。

 彼らがどんなに大切な人だったとしても、やがては忘れなければいけない。忘れてあげなくてはいけないのだ。

 彼ら、一足先にその先へ進む者の為に…。



「サウイフモノニ、ワタシハナリタイ」…サウ云ッタノハ、宮沢賢治であった。

 ≪雨ニモマケズ≫

 雨ニモマケズ
 風ニモマケズ
 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
 丈夫ナカラダヲモチ
 慾ハナク
 決シテ瞋ラズ
 イツモシヅカニワラッテヰル
 ・・・・・
 ・・・
 ・

 ソレ以降ノ多クハ、
 謹ンデ割愛サセテイタダキ、
 私ナリニ勝手ニ、
 数行ダケ付ケ足サセテ頂ク。


≪雨ニモマケズ 等トハ云ワズニ≫

 雨ニモマケズ
 風ニモマケズ
 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
 丈夫ナカラダヲモチ
 慾ハナク
 決シテ瞋ラズ
 イツモシヅカニワラッテヰル

 宮沢賢治ハ
 サウ云ッタケレド

 新大久保ニ散ッタ
 留学生トカメラマンノヨウニ
 ワタシハナリタイ

 きっと、3人揃ってホームに上がっていたならば、その二人は謙遜しながら“シズカニワラッテヰタ”のだろうに…。

 忘れてあげなくてはならないと判っていても、やはり彼らの名前を忘れたくない。  

 その場に居合わせたら、同じことはきっとできない。自分がそれができないことを知っているからこそ、不運にもその場に居合わせ、幸か不幸か“それができてしまった二人”のことを忘れてしまってはいけないように思えてくる。

 見ず知らずの他人である私でさえ、忘れつつもまだまだ忘れられない存在なのだから、家族や知人はさらに時間が掛かっているのだろうなぁ…。
posted at 2006/04/27 05:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 雑題雑想
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