フォーンブースと隠れた役者

2005年01月24日
コリン・ファレルが変わった味を出している。私は正直嫌いだったのだが、たった81分間のその変わった映画で、印象は微妙に変わっていった。

フォーン・ブースフォーン・ブース
Phone Booth
(2003/アメリカ)

監督 ジョエル・シューマカー
出演 コリン・ファレル(ステュー)
   フォレスト・ウィテカー(刑事)

嫌な役処の役者が、役どころか、本当に嫌な役者に見え、見終わった後に妙な嫌悪感を残す時がある。ある意味役者の力量なのか、それとも本当に持ち合わせた地の部分なのか。その境界を紛らわしくしているのがその役者の何なのか、時に混乱してくる。
 
ニューヨークの雑踏の中、ステュー(コリン・ファレル)はいつもの携帯からいつもの嘘を撒き散らし、いつものように一流パブリシストを演じていた。そしていつものフォーン・ブース:公衆電話にさしかかると、いつもの相手にいつもの浮気な電話を掛ける。

しかしその日、彼の切った公衆電話は突然鳴り出し、彼は無意識に受話器を取ってしまう。

電話の向こうでは、彼のプライベートを知り尽くすという男が淡々と語り始める。ライフルで狙っていると脅す男。半信半疑の彼の目前で、無関係の人間が男に撃たれる。

男の言葉に縛られてしまった彼は、いつしか電話を切れなくなっていた。

正直コリン・ファレルにあまりいい印象を持っていなかった私は、その先入観のお陰ですんなりこの映画に入り込んでしまった。

彼の自信満々の表情が、映画のストーリーと共に少しづつ崩れていくのが、妙にリアルで複雑だった。

 −・−・−・−・−・−

それにしてもこの映画、見終わって時間を見ると1時間20分だか21分だった。このところ3時間近い作品が多い中やけに短い。3時間ほどの映画を2回見せられた上に、平然とその続編の宣伝を紹介される映画とたった81分の映画を比べるのは無意味だろうか。きっと制作費なども制作日数も比べ物にならないだろう。

DVDにオマケ収録された監督自身の解説コメントでは、短期間の上に低予算での制作現場の話をしつこく繰り返していた。聴きようによっては、先に挙げた大作制作者たちへのあてつけとも受け取れる。

実際私にはほとんど同列同価値の二つの映画としか思えないが、興行収入的にはどうだったのだろうか。もちろん大作には及ばないのは明らかだが、81分とはいえたった10日で仕上げられたこの映画も興行収入対制作費の比率で考えると、かなり成績のよい結果だったのかも知れない。

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ところで、エンディングで私はちょっと驚いた。出演者の名前をまったく確認せずに見始めたこの映画が終わる頃になって初めて、その出演者に気が付いた。

「ん?…えっ?
 …電話の主って?…
 …そうだったのかぁ。」

その出演者の役どころにふとある映画と顔見せぬ役者を思い出した。映画「猿の惑星」のロディー・マクドウォールである。

私があの「猿の惑星」を見たのは、ほとんどがテレビ放映だった。それはつまり完全吹き替え版という意味である。映画のエンディングテロップに登場したロディー・マクドウォールの名前を見てふと考えた。吹き替えで見る「猿の惑星」に猿の科学者役で出演した役者ロディー・マクドウォールの意味を考えてしまったのだ。

似たようなところでは、アメリカのそうそうたる俳優陣を揃えた「シュレック」を吹き替え版で見るようなものだろうか。キャメロン・ディアスだろうが、エディ・マーフィーだろうが、「シュレック2」のアントニオ・バンデラスだろうが、吹き替えで見ていたら全く意味がないではないか。猿のメークでも演技が表現される「猿の惑星」ならまだしも、アニメやCGでは演技も何も関係ないだろ…と思えてくるのだ。

最近公開された「ポーラー・エクスプレス」は、その点を指摘されたかのようなトム・ハンクスの出演だった。吹き替えを担当したトム・ハンクスがCG映像の制作現場でも、データ取り込みに参加していたらしい。アニメなのに、そこには彼の演技が反映されているという。

この「フォーン・ブース」のラストに登場した“その役者”の場合、一応一瞬でも顔が映ったのだから「猿の惑星」ほどではない。だが、その声を聴かないのはちょっともったいなく思え、字幕に切り替えてすぐに見直した。

オマケ解説でも、監督がそのことについて触れていた。試写会の話だったか、声を聴き慣れているはずのアメリカ人でも、ラストになって初めて気が付く人がかなりいたそうだ。監督も意外だったと述べている。思わず口にされたその名前が、暗い客席の間を飛び交っていたという。

最初に紹介した映画の俳優名には、あえてその名前を加えなかった。エンディングを楽しみに見るのも面白いだろうから。まぁ期待しすぎてもがっかりすることもあろうからほどほどに…。
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posted at 2005/01/24 08:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映像批評
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