野の百合以外は何も要らない

2005年01月24日
私はこの日を待っていた。それがいつだかもわからず待っていたのだが、あと少しの辛抱だとわかった。きっと私のように、このDVDを探し求め、途方に暮れ、諦めかけていた映画ファンも多いことだろう。

2005年4月8日
「野のユリ」DVD発売!…予定祝!発売されました!
野のユリ野のユリ
Lilies of the Field
(1963/アメリカ)

監督 ラルフ・ネルソン
出演 シドニー・ポワチエ
   リリア・スカラ
   リサ・マン

輸入DVDでも探したのだが、リージョンコードの違いで国内用デッキでは再生できないと知った。一時は輸入DVDデッキの購入まで考えたが、もう少し待ってみるかとほとんど諦めかけて構えていると、幻の名作はいつのまにか発売予定となっていた。
 
車で旅を続ける黒人青年ホーマー(シドニー・ポワチエ)は、アリゾナ砂漠のまん中で修道女たちと知りあう。一晩の休息を提供してくれた彼女たちは、東独からの布教活動を続ける中、そこに教会を建設中だと言う。

一宿一飯の恩義のごとく、彼女たちは当然のことのように作業の手伝いを無理強いするが、経験のある彼にとっては無謀なことにしか思えなかった。

もう一日だけもう一日だけと手伝う彼は、そのあまりに無謀な努力を次第に見捨てられなくなっていく。

彼のそんな態度はやがて、町の人々の反感に満ちた心も変え、作業は少しずつ加速していく。

白黒映画のこの作品には、修道女の白い肌と青年の黒い肌がきついコントラストで描かれている。
(2005/4/11加筆…筆者の勘違いです。カラー作品でした。思い込みとは恐ろしいものです。)
(2005/5/31加筆…筆者の早合点です。やっぱ白黒作品でした。記憶は正しかった。)

その強いコントラストの背景には、自由奔放に旅を続け、自分なりの解釈ながらも信仰心を胸に偲ばせる青年と、ストイックなほどに教えを尊び、半ば無謀な教会建設を盲目的に実現させようとする彼女たちの対照的な姿が重なる。

それにしても、完成した教会を後に黙って立ち去るシドニー・ポワチエが何よりもかっこいい。あの清清しさと、プライドと、優しさに私は憧れた。何も求めずに去っていく彼の後姿のイメージが、彼女達に教えた彼の霊歌と共に、記憶の底にこびりついている。

実際初めて見たのはいつのことだか覚えていない。だがこの作品こそ、私の一番好きな映画である。今まで見た数百本の映画の中で、ジャンルも時代も関係なく、たった一つを選ぶとしたら、私はこの「野のユリ」を挙げる。

 −・−・−・−・−・−

そういえば有名な作曲家バッハの楽曲で、シャコンヌという作品がある。私の場合、齋藤秀雄氏編曲のシャコンヌが一番好きなのだが、そのシャコンヌについて誰かがこんな表現をしたと聞いた。

バッハ シャコンヌ
小澤征爾プレイズ・バッハ シャコンヌ…斎藤秀雄編曲
 この曲さえあれば何も要らない
  このシャコンヌ一曲さえあれば
 他の音楽などまったく必要ない
  この曲以外に何も要らないのだ
 バッハのシャコンヌさえ、そこにあれば…

そんな曲と語られているらしい。

私ならば、
映画は「野のユリ」さえあればよい。

私にとっては、これこそが映画である。他に何も要らない。この映画さえあれば、他には何も必要ない。それほど私には大事な作品であり、私にとっての理想の映画でもある。

 −・−・−・−・−・−

とはいえ、まぁ人それぞれであろう。そんな“一本の映画”は、皆それぞれ持っている。誰にもそんな作品が一本はある。私の“一本の映画”が、「野のユリ」なだけである。たった一本の大切な、自分だけの名画。

…いや、あと一本だけ、
「愛情物語」も欠かせないかも…。

愛情物語愛情物語
(1955/アメリカ)

監督 ジョージ・シドニー
出演 タイロン・パワー キム・ノヴァク
演奏 カーメン・キャバレロ

名ピアニストエディ・デューチンの波乱に満ちた短い生涯を描いた伝記物語

映画「愛情物語」の批評記事を書いても、似たようなことを言いそうな気がしてきた。結局たった一本挙げるなんて無理なのだろうか。
posted at 2005/01/24 01:26 | Comment(5) | TrackBack(0) | 映像批評
この記事へのコメント
私もずいぶんこのDVD「野のユリ」を探していました。海外のサイトにつなぎましたがみつかりませんでした。やっとあたりました。ありがとうございます。いつもいつもこの映画のことだけを考えていました。ただバッハは重いですが「マタイ受難曲」です。
Posted by 藤田嗣人 at 2005年02月23日 13:16
>藤田嗣人さん、発売おめでとうございます!
それにしても、
どうしてこんな名作が未発売だったのかが不思議です。名作中の名作ですからね、早く観たいです。一度思い出してしまうと、あの「エ〜メン♪」のメロディが頭の中に鳴りだし、止まらなくなります。

ちなみに、
私も輸入版の購入を考え秋葉原に探しに行きました。お店の名前は忘れましたが、検索すればお店の案内も出てくると思います。他にお探しのモノがあれば海外サイトでなくても、注文できるのではないでしょうか。

デッキの問題がクリアされればの話ですけどね…。
Posted by 映太郎 at 2005年02月27日 06:47
この作品、白黒ではありませんでした。
私は長く観てないので、何か勘違いしてたようです。思い込みって恐ろしいものです。

ってか、早く観たい…。
Posted by 映太郎 at 2005年04月10日 21:12
シドニー・ポワチエの「野のユリ」1963年作と知ってびっくり。
私の心の中に残る名作の1つなのです。
私が幾つの時に観たのか、今となっては正確に思い出せないのですが、おそらく、10いくつだったのは間違いありません。
もう1度、大人になってから観てみたいと思って購入しょうとしたら、すでに生産中止と言われ、私は、生きている間にこの映画を見ることは出来ないのでしょうか?
誰か、私の願いを叶えてくれる人はいないのでしょうか?
それと「汚れなきいたずら」も見てみたいです。
この映画のDVDは、発売されているので観ることは可能です。
この映画もとてもすばらしい名画です。
Posted by 野の百合 at 2006年07月09日 20:59
野の百合さん、はじめまして!
私も今まで観てきた映画の中ではまずベスト1ほどの位置を占めています。発売直後に買ったDVDを今でもたまに観ていますしね。

考えてみれば私も小学校低学年の頃から観ていたようです。子供が喜ぶような特にこれといった盛り上がりも無いクセに、結構何度も観ていた気がします。きっと親が気にいっていたのでしょう。

あの、主人公がふと黙って何も求めずに去っていくラストシーン、あれは永遠の憧れでもあります。
自分も同じ状況だったらあのように振舞えるのか。何度も観るたびに憧れは募りますね。
Posted by 映太郎 at 2006年07月10日 23:40
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