己の真の姿など一体誰が知る

2006年04月21日
 どうも誤解されている。新しい職場での話。

magritte“紳士”、“紳士的”という言葉に憧れている。それは、自分が最も遠い存在であって、まったく紳士的ではないことを知っているから…。

マグリッドの山高帽の紳士

 みな私の偽りの振る舞いに騙されているのか、それとも騙されている風を装い振舞っているのか。
 


 仕事の手順など、一度では理解できぬ為に一生懸命にメモを取れば、「映太郎さんて、マメなんですねぇ」と云われ、何から何までメモりたいが為に小さな手帳に極小の文字で必死に書き込めば、「映太郎さん、字小さくて綺麗ですねぇ」と云われ、遅刻して人格を疑われないようにと念の為かなり早めに出社すると、「映太郎さん、毎朝早いんですねぇ」と云われ、暇を持て余して掃除をすれば、「映太郎さんの家って綺麗なんでしょうねぇ」と云われ…。

 心の中では何度も言い返している。

「おいおい、そう簡単に騙されるなよ。こちとら必死に色々と振舞ってるだけなんだからさぁ…」

 まぁどうせそのうち、遅かれ早かれ本性は見抜かれるのだ。
 
 何も自分から積極的に騙しているつもりはない。だが、周囲に見えている自分の姿が、どうも自分の本来の姿とはかなり異なっているらしいことは、日々感じている。

 人の何十倍も忘れっぽいことを自覚しているから努めてメモっているのだ。人よりも字が汚いと思っているから努めて綺麗な“風”に描いているだけなのだ。誰よりも時間にルーズだと自覚があるからこそ務めて時間に余裕を持たしているのだ。誰よりも物臭で散らかし上手だから職場では努めて整理整頓を心がけているのだ。

 すべては根っからの性分を自覚した上での反動なのだ。なのに、それが私の素の性格だと誤解されつつある。

 あぁぁ、どうせ一ヶ月もすればボロが出始め、ニ、三ヶ月も経てばみな判るだろう。

 案の定、毎日家を出る時間は少しずつ遅くなってきたし、メモだって取るには取るが、だんだん書きなぐったメモが溜まって、メモの整理も追いつかなくなってきた。

 なんだかなぁ…。どうせそのうちバレるなら、初めから何も無理せず普通に振舞えばいいのに、実は一番隠し通していたい一番嫌な自分の性格が、必死に抵抗している。

 一番嫌で、一番自覚したくない自分の性格。それは結局、“人よりも少し、しかし確実に上に評価されたい”と思う自分なのだろう。

 「彼は仕事が速い」…と云われたい。それは自分が何事にも遅いと判っているから。「彼は要領がいい」…と云われたい。それは誰よりも要領が悪いことを知っているから。

「彼はお洒落だと…」「彼は素敵だと…」「彼は…だと…」…、云われたい、評価されたい言葉があるほどに嘘が増えていく。

 騙すつもりはないと言った処で、結局はやはり“嘘”は嘘。言葉としての嘘ではなくとも、真実とは異なる風を装うという意味では、やはりそれらを嘘と云わざるを得ない。

 まぁ先のことを考えてみれば、それらは最後まで隠し通しすことができての嘘であろう。先々どうせ隠し通せないことが判りきっているなら、嘘の罪も先々どうせ消えてしまうと甘えてよいのかどうなんだか。



 自分のことを100%知っている他人などどこにも居ない。

 実際自分自身ですら、自分のことを100%判りきっていないのに、例え家族だろうと、兄弟だろうと、幼馴染の親友だろうと、長年連れ添った夫婦だろうと、自分の知りうる限りの自分自身のことを全て知っている他人など、やはりどこにも居ないのだ。

 でもそんな中で、自分のあらゆる面を知り尽くした人を友人やパートナーとして持ち、努めて嘘の姿を振舞うこともなく、全ての面で受け入れられるとしたら、それは一体どんな関係なんだろうか。 

 そういった相手が現れたとしたら、一緒にいて楽なんだろうか。ふむ、楽とは限らないのかも知れぬ。だが楽でなくとも信頼できるのか。

 一緒に居て楽な人が最良のパートナーとは限らないとも思えてくるし。一体全体、結局南極、どっちがよいのか悪いのか。なんだかなぁ…。

 はて、私は何も判らなくなってきた。



 そうそう、ふと思い出した。子供の頃からよく云われてきた最も私が気にしている言葉。

「映ちゃんは本当に優しいねぇ」

 最も気にして、最もその評価を意識するというのも、考えてみれば無意識に現れているある種の“反動”なのかも知れない。

 きっと、私はもっとも優しさと程遠い人物なのであろう。

 だからこそ、“優しい”という言葉を、他人からの評価として最も期待しその評価を得んが為に振舞っているのだ。それだけは自分自身が最も知っている。

 私はまったく優しくない人間である。
posted at 2006/04/21 00:54 | Comment(0) | TrackBack(0) | 雑題雑想
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。