そのケーキ誰のモノ?

2006年04月08日
 空だよ空。

 空があまりに心地よい色だったんだよ。

 それでね、ふと公園のベンチに独り横たわってさ、ボーっと空を見上げてみたんだ。


 広い空を見上げてみるとさ、視界の外に消えた周囲の景色も忘れちゃってさ、いつのまにか空の中に浮いているような気分になったんだよ。
 
 どこまでも透き通った水の中にいるのに、なぜだか息ができて、苦しくもなければ、溺れるわけでもない。そんな気分になったんだ。


 水面に浮き上がるわけでもなく、水の底に沈むわけでもなくてね。それどころか、上も下も右も左も無くなってさ。


 そこが公園のベンチなんてことは疾うに忘れてさ、水の中を漂っているのか、空を浮かんでいるのか、それとも自分は夢を見ているのか、延々と空から落ち続けているのか、何にも判らなくなってくる。

 そんな気分になったんだよ。

 それでね、気がつくと自分のベンチにケーキの箱が置いてあったんだ。こっそり中を開けるとさ、それはそれは美味しいそうなケーキがね、一つ入っていたんだよ。

 どんなケーキかって? そんなことは説明できないな。だってさ、それがケーキだとは判っているのに、でもそれは今までに見たこともない形や色をしてたからね。

 いつのまにか誰かがやってきて、何も言わずにケーキの箱を置いていったのか。僕は色々考えちゃったよ。

 僕にくれたのかな。サプライズなのかな。食べてしまっていいのかな。

 色々考えてるうちにさ、どうしてここにケーキがあるのかなんてどうでもよくなってさ、そのうち味のことばかり想像が次から次へと浮かんできたんだよ。

 たった一個の、それも僕のケーキかもわからないのにさ、想像しているだけでさ、本当に味わっているような気までしてきたんだよ。

 食べてしまったらさ、それは一個分のケーキでしかないのに、食べずに色々と想像してみるとさ、色んなケーキを味わえることに気がついたんだ。

 あはは、こりゃいいな。食べずに想像するだけで、いくらでも楽しめるケーキ。何度も味わえるし、どんな味でも楽しめる。

 誰かが見張っていると嫌だからね、箱のフタはさっさと閉じてさ、そして僕はもう一度ベンチに横たわってさ、思いつく限りの味を想像してみたんだ。

 最高でしょ、それってさ、最高だよね。


 でもね、どのくらいの時間想像してたんだか忘れちゃったんだけどさ、ふともう一度箱を覗いてみようと想ってさ、僕は起き上がって箱に手を伸ばしたらさ、無いんだよ、ケーキの箱が。

 あれ、あれれ。無い、無くなってる。誰だよ、こっそり持っていった人は。


 僕はまた横たわって考えてみた。あのケーキは一体何だったんだろうってね。こっそり置いていって、またこっそり持って返った人は誰だったんだろう。あのケーキ、てっきり僕のものだと思ってしまったけど、何で持って行っちゃったんだろう。

 あぁぁ、誰かに担がれたってわけか。なんでぇ、つまんないの。ぬか喜びさせやがって。

 あれは一体誰のケーキだったかは、結局判らないんだけどさ、元々僕のじゃなかったのだしさ、突然無くなって少しは腹も立ったけどさ、でもさ、空を見ていたらさ、だんだんケーキのこともまた忘れてさ、プカプカ漂ってる気分に戻ったよ。


 それよりさ、空だよ空。やっぱ空なんだよ。綺麗な空があればさ、それでいいんだよね。

 そう言えば話が全然変わるんだけどさ、もう随分前なんだけどね、リチャード・ドレイファスが主演した映画があったっけ。

 「そのケーキ誰のもの」…なんか違う気がするなぁ。

 まぁそんなこたぁどうでもいいや。それがケーキだろうと何だろうとさ、どっちにしろ似たようなもんだしね。
posted at 2006/04/08 02:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 死生私観
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