十億分の1コマに映らぬ意図

2005年01月16日
小惑星が地球に衝突する確率は300分の1だという。

その数字の全く天文学的でない不安は相変わらず消えないが、そんな確率が映画のタイトルになっている。

映画「10億分の1の男」

不思議なタイトルにちょっと惹かれるが、人間がそれぞれ持ち合わせる“運”を競い戦うという奇抜な発想も不思議で気になる。

10億分の1の男10億分の1の男
(2001年/スペイン)
監督ファン・カルロス・フレスナディージョ
出演レオナルド・スバラグリア
  ユウセビオ・ポンセラ
  マックス・フォン・シドー
  モニカ・ロペス
  アントニオ・デチェント

奇抜な発想と美しい映像には、たっぷり魅了された。
 
かつてユダヤ人収容所から生還し、現在はカジノを経営をする「強運」な男サム(マックス・フォン・シドー)。彼は他人の運を奪い取る能力を持つといわれる。その彼に、地震で崩れたがれきの中から助け出され、同じ能力を授けられたフェデリコ(ユウセビオ・ポンセラ)は、後継者として全てを託そうとしていたサムの期待を裏切り彼の元を去るが、別れ際その能力を再び奪い取られる。

フェデリコは数年後、飛行機事故からの奇跡的に生還した逃走中の銀行強盗トマス(レオナルド・スバラグリア)を見つけ出し、あるゲームへの参加を誘う。トマスは自由を求めその「ゲーム」を始める。

互いの運を競い合うその奇妙なゲームには、彼らを追う刑事サラ(モニカ・ロペス)までもが、自らの運を頼りに参加していた。

追い追われ勝ち進む彼らは、サムが待つカジノの地下室へと向かう。サムが待ち受けるその部屋で行われるゲームとは…。

それにしても、普段あまり目にしない国の俳優ばかりなのに、すんなりと話に引き込まれていったのは、余計な配役や無意味なシーンがことごとく削ぎ落とされていたからだろうか。

全体的には正直若干物足りなかったが、短くまとめられたストーリーと美しい映像には満足している。

 −・−・−・−・−・−

話は作品からズレるが、
映画に登場するなにげない台詞や、ちょっとした小道具が、時として観客の好奇心を不必要に刺激してしまうことがある。

「これは何を意味するのか?」
なにげなく登場したアイテムに引っかかりそんなことを考えていたら、映画のラストまで二度と現れなかったなんてこともよくある。

逆に無駄をあまりに削り過ぎ、時に味わいや深みまでも薄れ、まったく味気ない映画になってしまうことだってある。

だが、そんな物言わず動かぬ登場静物たちにも、監督は必ず何かを込めているはず。監督の書き込む見えないサインを読み解くプロセスは結構楽しく、その興味は同じ作品を何度も観る気にさせる。

 −・−・−・−・−・−

ところで、
監督という神様は、時には観客の期待に優しく応え、時には観客の期待をあっさりと裏切る。たまに観客の期待をはるかに越え、そしてある時は観客の期待をなにげなく無視しさらりとかわす。

その繰り返しが楽しくもあり、監督の様々な裏切りまでをも期待して観る。大抵監督はその両面を意図してあえて期待を裏切り、最終的には期待に応える。もし最後まで裏切り続けたとしても、そこには監督が特別な意図を込めているからこその決断だろう。

だが、普段は見過ごす監督の裏切りも、たった一度だけ許せずに終わった映画がある。そのエンディングを見終わった瞬間私は号泣した。涙は止まらず、一時間ほど放心状態で何もできなかった。

その時私は思った。
私はこの映画を二度と観ない。

映画「ディア・ハンター」

当時日曜洋画劇場の解説者淀川長治は静かな口調だったが、その言葉に込められた想いはかなり激しい表現をしていた。

“心無い心”のこもった映画

ディア・ハンターディア・ハンター
THE DEER HUNTER
(1978/アメリカ)
監督マイケル・チミノ

出演ロバート・デ・ニーロ
  クリストファー・ウォーケン
  ジョン・サヴェージ
  ジョン・カザール

その映画の“神様”が映画のラストでしたことが許せなかった。もしかしたらこの激しい感情までもが、その“神様”が意図したことかも知れない。しかしそんな直接的な表現しか選択できなかった“神様”はやはり私には許せない。

「そりゃ涙を流したさ。でも、涙を流すことが、感動しているとは限らないんだよ…。」
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posted at 2005/01/16 00:29 | Comment(3) | TrackBack(0) | 映像批評
この記事へのコメント
突然お邪魔いたします。『ディア・ハンター』淀川氏が解説されていた頃ということは、どれくらい前の映画なのでしょうか?どういう意味で泣いたのかがとても興味深いので、これから調べさせていただきます。想像力にかき立てられております。失礼しました。
Posted by チロル at 2005年01月16日 01:56
>チロルさん、こんばんわ!
私が「ディア・ハンター」を日曜洋画劇場で観たのは、たぶん二十数年前だと思います。

私はあまり勧めたくありません。
映画が好きです。でも一本だけこの映画の心無さが許せません。ある意味で感動したことには違いありません。心を揺さぶられましたからね。ただ、その方法が許せないのです。

あの映画でクリストファー・ウォーケンが好きになったのは事実ですが…。

ストイックに映画を見ることができるなら、一度観てはいかがでしょうか。

ちなみに、ネタバラシはいてもいいのですが、他の人が希望しているとは限りませんから、止めときます。ご自分でお確かめください。
Posted by 映太郎 at 2005年01月16日 02:17
>チロルさんへ、追伸です!
「ディア・ハンター」の情報を追加しておきました。たぶんご自分でもお調べとは思いますが、一応念の為。

ちなみにあなたのコメント、
「想像力にかき立てられております。」
励みとさせていただきます。

誰かの感想や批評や薀蓄論評…などで、
「その映画の一体どの部分にどう感じたの?
それってどんな映画?誰の?何の?…?????」

こういった疑問って、映画などを見る良い原動力ですよね。そういうキッカケを色んな人に与えていきたいとも思います。私も色んな人からそんなキッカケを貰って色んな映画を見てきましたからね。

それは時に電車の隣の人の会話であったり、時にトーク番組のゲストの言葉だったり…。

やみくもにレンタルショップのオススメに従ったり、端から片っ端に見るのはイヤですから。
Posted by 映太郎 at 2005年01月16日 03:22
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