二つのハリケーンの関係

2004年08月08日
中学時代、FEN(FarEastNetwork:極東米軍放送)を聞きはじめた頃のある時期、映画と同名のその曲が一日中流れていた。

「HURRICANE/ハリケーン」
by BOB DYLAN/ボブ・ディラン
album「Desire/欲望」(1976)
1.HURRICANE 2.ISIS/3.MOZAMBIQUE 4.ONE MORE CUP OF COFFEE 5.OH,SISTER 6.JOEY 7.ROMANCE IN DURANGO 8.BLACK DIAMOND BAY 9.SARA

ボブ・ディランの歌は、当時の私の中学英語ではほとんど聞き取れなかった。それでも、しきりに繰り返される「…Story of The Hurricane♪…」というフレーズが、ひどく印象に残った。

ハリケーンのストーリーって何?
 
そのストーリーが冤罪の黒人ボクサーについてだと知ったのは何年か後だった。悲壮なバイオリンのメロディーと、淡々としかし力強く歌うボブディランの声は、その後も長いこと耳から離れなかった。

最近になってその名の映画を見て初めて、その曲がどんな意味を持つものだったかを知った。同時に、その曲がその映画と同名の曲なのか、それともその映画がその曲と同名の映画なのか、どちらとも言い切れないその同名の二つの作品の切っても切れない関係が、全て事実によるものだったとも知った。

映画「The Hurricane/ザ・ハリケーン」
(1999/アメリカ)
監督・Norman Jewison
出演・Denzel Washington/デンゼル・ワシントン・Vicellous Reon Shannon・Deborah Kara Unger・Liev Schreiber・John Hannah

1966年ニュージャージー州の酒場で、白人3人が射殺される。 警察は、黒人ボクサーのルービン・ハリケーン・カーター(デンゼル・ワシントン)が、事件現場から立ち去ったという有罪証言を捏造。無実の証拠となる否定証言を隠蔽し、犯人に仕立て上げる。終身刑判決を受け、再審請求がことごとく却下されていた彼の元へ、一人の黒人少年が面会に訪れる。

彼を慕う少年の友人達は、資料の陰に隠されていた無実の証拠を見つけ出すが…。

1976年のボブ・ディランのアルバム「Desire(欲望)」の一曲目を飾る曲のタイトルは、『ハリケーン』。

冤罪の黒人ボクサーを歌うこの曲は、まさにこのルービン・ハリケーン・カーターを全米に知らしめた曲だった。事件から22年後の1988年、自由を勝ち取った彼の無罪判決には、人種差別を訴えたボブ・ディランのこの曲が大きく影響したと言われている。

そんな逸話も知らずに聴いていた私の耳に、今でもしっかりとこびりついている。

 −・−・−・−・−・−

ところで、そんなストーリーの本筋とは関係ないのだが、黒人少年と主人公のやりとりが印象に残った。

ハリケーンを救おうとする黒人少年は、ある時彼にふと尋ねる。
「どんな本を読めばいいの?」

黒人少年のそんな問いに、彼は答える。
「何を読むべきかは教えてやるが、
 そこから何を感じ取るかは、
 お前次第だ。」

主人公の台詞に、
父に言われた言葉を思い出す。

ハリケーンを聴いた同じ頃、クラシックにも興味を抱き始めた中学生の私は、“何か”を聴きたくてしょうがなかった。クラシックレコードを数千枚は所蔵していた父に、ある時私は尋ねた。

「オススメのクラシック曲、何んかない?」
「聞きたいモノが無いのなら、
 何も聞かなくてよい!」

私の父の場合、何を聞くべきかすら教えてくれなかった。“何か”を求めていた私には、あまりにあっけない答えだった。

子供にはつい、この本その曲あの映画と思いがちだが、そこから何を感じるかなど結局本人次第なのだ。何を見るか何を聞くかさえ本人次第と父は割り切っていたのだろう。

“何か”など、どこにもなかった。

現在、その父の書斎から漏れ聞こえていたクラシックを赤ん坊の頃から耳にしていた私は、すっかりクラシック党となっている。
posted at 2004/08/08 00:00 | Comment(0) | TrackBack(2) | 映像批評
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