ノッティングヒルの絵巻物

2004年12月24日
お昼前のひととき、NHK教育で放送されていたミニ番組は、日本絵画史を代表するという三巻の絵巻物をたった10分でさらりと紹介していた。

「国宝 その美と技」
〜国宝 信貴山縁起絵巻〜
(NHK教育2004/12/23/11:45〜11:55)

その短い時間の作品解説は、かなり強引に要約された内容で無駄がなく、非常にわかりやすいものだった。とはいえ正確な専門用語のひとつひとつを一度では覚えきれない。いくつかの言葉と最後に再び読み上げられた絵巻の名前を、私は慌ててメモに残した。検索するために。

異時同図法4人の尼ぎみみょうれん姉と弟国宝しんぎさんえんぎ絵巻

番組中一番気になったのが、
この「異時同図法」という名の絵画手法である。

この手法、マンガの世界でも当然のように利用されていそうだ。
 
異時同図法
一つの背景の上に、色々な姿の同一人物があちこち同時に描かれ、それら様々な行動の間の時間経過を表現するという。絵巻の中ではたしか、何事もなく暮らす二人の登場人物の平和な時間の流れを表現していたという説明だったと思う。

信貴山縁起絵巻という言葉で検索すると、その絵巻をもう一度見せてくれるサイトが存在した。

「サントリー創業100周年記念展IV」
≪国宝 信貴山縁起絵巻≫
信貴山朝護孫子寺が所蔵する国宝「信貴山縁起絵巻」は、平安後期に描かれた日本絵画史を代表する傑作の一つです。
サイト⇒リンク

ひとつの手法…●絵巻の中では、たくさんの米俵が空を飛ぶ様が描かれているのだが、その一部をわざと絵巻からはみ出すように描き、その数の多さを表現しているという。

また別のある手法…●右から左への時間軸移動を時に覆し、目線を左に移した先にあえて右手前の絵柄の過去の風景をフラッシュバックのように表現しているという。

そして先に説明した手法…●一つの背景上に同一人物を同時に多数存在させ、ひとつの絵柄で長い時間経過を表現しているという。

ふむ、これらの手法も現在のマンガ家たちには基本中の基本かもしれない。そういえばマンガやアニメの歴史講義に必ず出てきそうなあの「鳥獣戯画」も同時期の作品らしい。つくづく日本人はこの種の手法において進んでいたということだろうか。

 −・−・−・−・−・−

ところで、この手法の数々は私にはとても興味深いものだったが、記事にするほどではなかった。一応サイトはローカル保存したもののすぐに忘れてしまった。だが、録画した深夜の映画を何度も見ているとふと思い出し、その重なる手法に驚いた。

「ノッティングヒルの恋人」
映画に関しては⇒「ノッティングヒルの休日」

シーンナンバー不明
賑わう通りを主人公が孤独に歩き続ける。
いつの間にか季節はあっという間に過ぎていく。

−・−・−・−・−
「Ain't No Sunshine When She's Gone♪」の、
待ったりとしたBGMが流れ始めると、
主人公の本屋ウィリアム・タッカーは、
ジャケットを肩に通りを散歩している。

皮肉なほどの露天の喧騒、
楽しそうな人々の顔、
孤独に通り抜ける彼の姿。

歩き続けるうちいつしか雨が降り、
木枯らしに落ち葉が舞い、
いつのまにか一面に雪が積もり、
Xmasツリーを運ぶ人が行き交い、
交差点を横切るとまた雪景色は消え、
春の花々が露天を飾っている。

たしか歩き始めた時にすれ違った妊婦は、
やがて赤ん坊を抱いている。
−・−・−・−・−

このカット、シーンというよりまさしくワンカットなのだが、それぞれの季節を上手につなぎ、彼は一瞬たりとも歩みを止めず一巡りの季節を散歩している。その賑わう通りの風景が、一巻の動く絵巻となっていたのだ。

異時同図法という手法の一つの作品例が、こんなところで見られるとは…。その現代の絵巻の中に主人公はたった一人しか存在しなかったが、その表現手法はまさしく同じものを意図していた。時の流れである。

先の記事では46年離れた作品の共通点を見出そうとしたのだが、ひょんなことから1000年も離れた二つの作品が繋がってしまった。小さな教育番組が面白いトリビアをもたらしてくれたことに、大げさだが何かの共時性を感じてしまう。
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posted at 2004/12/24 05:18 | Comment(0) | TrackBack(1) | 放送批評
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