小説智恵子抄―佐藤春夫著

2010年01月01日
 1月1日、こんな本を読んだ。

小説智恵子抄―佐藤春夫著/角川書店―角川文庫 
 
  小説智恵子抄

 佐藤春夫著
 角川書店/角川文庫
 ・第一部 静寂の価
 ・第二部 同棲同類
 ・第三部 魂の別離 

 時は五月、砂丘光る九十九里浜に遠見える二つの影。一つは群がる千鳥を戯れ追う童の如き狂女、一つは松の花こぼれ散る林に近くその姿を見つめるその夫。そして詩人たる夫はのちに歌う。「智恵子は見えないものを見聞こえないものを聞く…」 詩人佐藤春夫が高村光太郎智恵子夫妻の至純な魂の交流を描いて爽やかな感動を呼ぶ名作。(裏表紙紹介)


 そんな愛し方、それほどまでの愛され方もあるのよと、誰かが云っていた。智恵子さんのような生き方よ、その人は云っていた。

 それはどんな愛し方なのか、どれほどまでの愛され方なのか。
 その名に惹かれ、ふと手に取った一冊。
 
 人は気が触れんばかりに誰かの愛を欲し、そしてその人の愛を手にすることができるなら、その人の愛に無限に包まれるとしたら、その代償にたとえ本当に気が触れてしまったとしても、それもそれで幸せと云えるのだろうか。強く欲していた愛を、感じられぬ身になったとしても。



 やがて心の病が激しくなり、専門の病院に入院することになった智恵子に、光太郎は色とりどりの折り紙を差し入れる。単純な手作業が、病の進展を少しでも食い止めるのではと。

 だが驚くことに、彼女はかつて諦めていた絵の才能をそこに開花させ、みごとな切り絵を次々と生み出してゆく。

 彼女はその作品を看護婦や医師たちからはひた隠しにし、ただ光太郎の為だけの芸術として、彼が見舞いに来た際にだけそっと見せるのだった。

「…さながらに光太郎に対する恋文のように…」
 「小説智恵子抄」―第三部 魂の別離より



 人は気が触れんばかりに誰かの愛を欲し、そしてその人の愛を手にすることができるなら、その人の愛に無限に包まれるとしたら、その代償にたとえ本当に気が触れてしまったとしても、それもそれで幸せと云えるのだろうか。強く欲していた愛を、感じられぬ身になったとしても。
 
201001011739
posted at 2010/01/01 17:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍批評
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