風に舞いあがるビニールシート―森絵都著

2009年12月20日
 12月20日、こんな本を読んだ。

風に舞いあがるビニールシート―森絵都著/文藝春秋社/文春文庫 
 
  風に舞いあがるビニールシート
 
 森絵都著
 文藝春秋社/文春文庫
 ・器を探して ・犬の散歩
 ・守護神 ・鐘の音
 ・ジェネレーションX
 ・風に舞いあがるビニールシート
 
 才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり……。自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。あたたかく力強い、第135回直木賞受賞作。(裏表紙紹介)


 あ、この人、カクタさんに「ごきぶり ごひきで ごひゃっぴき」って云わせた人だ…、と思って何気なく買ってしまった一冊。
 


 物語の中の誰かの価値観を覗き見、誰かの価値観の天秤皿を見比べ、誰かの価値観が些細なことで引っくり返る様を見届け、そしてそれまでぼんやりとしていた自分自身の価値観を見出す。それが小説だと思っていた。まさにその典型にも思える六つの短編は、物語としても価値観としてもとても判りやすい実例だった。

 個々の作品としては、重い展開と聞きなれぬ言葉の数々にいっこうに頁が進まなかった「鐘の音」の後半の引っくり返し方に驚き、また、軽そうなタイトルで想像した軽さをさらに上回る軽いノリで展開していく「ジェネレーションX」のラストの、とても心地よい締めくくり方に唸る。

 NHKドラマの番宣でおぼろげにも内容が見えてしまっていた「風に舞いあがるビニールシート」も読んでみれば結構深いものだったが、それにしてもそれぞれの作品それぞれに心地よく裏切られ、心地よい読後感に余韻もかなり心地よく満足。



 そういえばかつて、自由が丘のグレッグとかいった英会話教室の米国人講師に、“価値観に対する価値観”という変な言い回しを中学英語で必死に説明しようとした20代を思い出す。

 私がその若い米国人講師に伝えたかったのは、“人にはそれぞれ、その人なりの価値観というものがあるけれど、そのそれぞれの価値観に対する価値観の持ち方さえもまた、人それぞれでしょう?”…ということだったが、必死に説明するもどうにも妙に通じず、やがて彼は困り果てた揚句に、ではまた来週と笑いながら逃げていったっけ。

 価値観が百人百様なんてことは当たり前だが、その己の価値観に対する価値観の持ちようもまた百人百様。百の価値観を比べても意味はないが、己の価値観に対して一体どれだけ自分だけの価値観を見出すのか、それこそが重要だと私は思う。

200912200535
posted at 2009/12/20 05:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍批評
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