第九は最後で最初の交響曲

2004年12月21日
年末恒例のあの曲があちこちで流れている。
言わずと知れた年末交響曲、ベートーベン作曲交響曲第九番「合唱付き」である。

NHKも毎年この時期飽きずに放送してくれる。こういった頑固さだけは評価したい。

NHK音楽祭2004ハイライト
≪ラスト・シンフォニー=大作曲家たちの最後の交響曲≫
ベートーベン作曲第9番ニ短調作品125「合唱つき」
管弦楽・チェコフィルハーモニー管弦楽団
指揮者・ズデネック・マカール
司会・森田美由紀 解説・黒田恭一
(収録2004/11/17NHKホール)

それにしても一体どうして、日本人は年の暮れになるとこの曲を聴きたくなるのだろうか。

そんな「第九」好きの不思議な日本人のために、「第九」ネタのトリビアをひとつ。

ベートーベンの「第九」が、

初演された時、指揮者は
 
・・・・・


音楽芸術を学んでいた両親から譲りうけた、936頁の“クラシック大辞典”「音楽通史」を調べてみると、ベートーベンの交響曲「第九」が初めて演奏された時の異例な様子が記されている。

私の“クラシック大辞典”:「音楽通史」村田武雄著 「音楽通史」
村田武雄著 定価500円
昭和23年11月20日印刷
昭和23年11月24日発行

私の音楽的価値観の源であろう両親の音楽的価値観の源泉であろう書。

その本で発見したトリビア。

ベートーベンの「第九」が、

初演された時、指揮者は…

2人いた。

「音楽通史」の著者村田武雄氏はその中で初演の様子をこう述べている。

ベートーベン交響曲第九番「シルラァの歓喜の頌にもとづく合唱終楽章を有する交響曲」に関する記述
「第9交響曲ニ短調」(作品125)は、1824年の作。…。初演は1824年5月7日ウィンで、ベートーベンと国立歌劇場指揮者ウムラウフ(Michael Umlauf)の2人の指揮によって行われた
ベートーベンはすでに完全に聾で実際の指揮はできず、ただ表情的に動くだけであったので、事実上の指揮はウムラウフが行ったのである。

初演演奏時にすでに聞こえなかったとは知っていたが、指揮者が2人いたとは今回調べてみて初めて知った。記念すべき初の演奏が聴こえず、ただ見るだけだった彼の気持ちはどんなものだったのだろう。

村田武雄氏の記述
「まさしくこれはベートーベンの人生観の告白であり、理想の提示であったといえるのである。」

彼がその曲に込めた特別な想いと、彼の皮肉な運命を想うと憂鬱になる。

 −・−・−・−・−・−

憂鬱な気分を変えるため、「第九」ネタトリビアをもうひとつ。

コンパクト・ディスクの

収録時間の基準は、

「第九」

これは有名な話なので、ご存知の方に「そんなもんトリビアじゃねぇ」と言われそうである。

トリビアも
 知ってる人には
  だから何?

CD開発の現場ではその直径と収録時間を決定する上で、様々なクラシック曲の演奏時間を調査し参考にしたらしい。

その中で重要な条件として最も影響を与えた曲がこの第九だったという。「どうせ作るなら「第九」がすっぽり納まる時間にしよう」…というわけらしい。

 −・−・−・−・−・−

NHK音楽祭のテーマはラスト・シンフォニー、つまり最後の交響曲だった。

まさしくこのベートーベン最後の交響曲「第九」は、彼の最後の交響曲であり、日本の一年を締めくくる最後の交響曲でもある。しかしこの曲、私の人生の中では最初の交響曲でもある。

小学校高学年の頃、音楽関係の仕事をしていた父は突然私を連れ出した。
「今日は黙って付いて来い。」
そう言われて行った場所はコンサートホールであった。

聴いている時の曲の印象は全く覚えていない。それが「第九」だと知ったのも、しばらくしてからである。しかしその時私の全身に鳥肌がたち異様な感覚に包まれた印象だけは忘れない。

父の仕事場から漏れ聞こえるレコードの音から、クラシックというものも身近な日常の音であった。それでも、生の演奏は全く違っていた。

「第九」とは、私にとって特別に最初の交響曲なのだ。

父と2人きりで出かけた記憶はその演奏会が最初で最後のような気がする。

 −・−・−・−・−・−

ちなみに、私のライブラリーのノーマルな「第九」は数枚だけだが、お勧めは若干アブノーマルなバージョンだ。

CD ベートーベン第九 リスト/シプリアン・カツァリスシプリアン・カツァリスのピアノバージョン(左写真)や元ウォルター・カルロス改めウェンディ・カルロス(性転換して女性になってしまった)の映画「時計仕掛けのオレンジ」挿入バージョンが面白い。ノーマルな「第九」を聴き尽くしてしまった人には面白いかも知れない。

初めての人には、本物が先か特異バージョンが先かでそれぞれ印象も異なるだろうが、それもそれで楽しめることと思う。

どちらにしても、是非お試し頂きたいことがある。
どんなバージョンだろうとその演奏が終わった瞬間、その音を耳にできなかったベートーベンの気持ちを想像して頂きたい。

村田武雄氏の記述
結果は非常な成功で、通例喝采は3回がきまりであったが、それが5回にわたっても静まらず警官の手で制止した有様であった。しかし聾のベートーベンにはその熱狂的喝采が聞こえず、ためにアルト歌手が袖をひいて聴衆の方に振り向かせたという涙ぐましい逸話さえ残っている。

最近その姿をステージ上に想像してしまう私には、涙なしには聴けない曲となっている。
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posted at 2004/12/21 12:36 | Comment(0) | TrackBack(1) | 音楽批評
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