犠牲 サクリファイス―柳田邦男著

2009年12月06日
 12月6日、こんな本を読んだ。

犠牲―サクリファイス (文春文庫) 
 

  
 
  犠牲―サクリファイス
   わが息子・脳死の11日

 柳田邦男著
 文藝春秋社/文春文庫
 
 冷たい夏の日の夕方、25歳の青年が自死を図った。意識が戻らないまま彼は脳死状態に。生前、心を病みながらも自己犠牲に思いを馳せていた彼のため、父親は悩んだ末に臓器提供を決意する、医療や脳死問題にも造詣の深い著者が最愛の息子を喪って動揺し、苦しみ、生と死について考え抜いた11日間の感動の手記。(裏表紙紹介)


 この本、以前から興味は抱いていたのだけれど、ついに手に取ってみた。
 


 一人の息子を持つ身として、とは云ってもまだまだ父も息子もある意味幼い親子の父親としてだが、父である柳田邦男氏に同じ父親として感情移入するはずのところを、どうしても息子洋二郎氏の生前の様々な想いに感情移入してしまう。まだまだ父という存在などには程遠く、まだまだ息子としての存在から脱し切れていないからなのだろう。

 とはいえ、洋二郎氏の抱えていた漠然とした孤独感と、それに対する計り知れない不安感は、私がこの十数年感じていた私なりの漠然とした孤独感と抗う術もなき無力感にどこか似通っている気がし、不思議な想いで読み進んだ。



 ふと一枚の絵を思い出す。
 本書とは一切関係ないが、映画「フィアレス」のエンディング近くに登場したある一枚の宗教画。暗いトンネルの彼方に輝く大いなる光と、その前に立ち尽くす死者。絵には一文が添えられていた。

 The soul comes to the end of it's long journey and,naked and alone,draws near to the divine.

 絵に添えられた文章の原典は知らないが、その中の言葉―naked and alone―が、ふと自分が長く感じていた漠然とした孤独感を少しだけ裏付けたような気がしたのを思い出す。一つの魂としての孤独。
 
 naked and alone...

 神の御前において、何もまとわず、何もたずさえず、そしてたった独りで、大いなる審判に身をゆだねる。(私役)

 存在するか否かも定かではないあの世の入口に、たった独り立ち尽くす姿を想像し、今からそんなどうしようもない孤独感に不安に陥るというのもまったく馬鹿げた話ではあるけれど、なぜか十数年前からそんな不安に怯える自分を意識し始めたのは確かである。これこそが「百年の孤独」(ガブリエル・ガルシア=マルケス)の孤独感なのだろうか。

 alone...



 読み終えてふと思い立ち、私も骨髄バンクに登録しようかとネットで調べてみたところ、何でも身長体重比制限があるとのこと。複雑な読後感にさらに複雑な想いが絡み、さらに新たな不安と悩みが膨らむ。なんだかなぁ。

200912060628
posted at 2009/12/06 06:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍批評
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