短編「外交大熊猫名称問題」

2006年01月19日
 今中国は台湾に大熊猫を贈りつけると大々的に宣伝し、相手の反応を楽しんでいる節がある。

 その些細なきっかけと背後に潜む大きな問題のアンバランスさも、一昔いや五つか六つほど昔なら戦争にもなりそうな雰囲気である。“中台パンダ戦争”ってとこだろうか。まぁ遠くの方では天然ガスをきっかけにした“露ウ天然ガス戦争”なんてモノまで起こりそうな気配もあるし、身近なところでは靖国や映画サユリをきっかけけとした“日中きっかけは結局何でもいい戦争”なんてもモノさえいつ起きてもおかしくない状況が続いている。

 ってことで、オバカな外交手腕を考えていたら、オバカなパンダの名前が浮かんできたので、オバカな話を作ってみた。
 
 ちなみにサイト≪短編≫に投稿しようと思っていたら、あっという間に千文字を超えてしまったので今回は投稿を諦めた。
 


  外交大熊猫名称問題

 1972年中国政府は米大統領初の訪中を記念しニクソン米大統領訪中時の首脳会談の中で米国に二頭の大熊猫を贈ることを確約した。ニクソン離中後中国はその記念すべき大熊猫二頭の名称の検討を始める。当初モウモウとタクタク案が有力候補として駐中米国大使に打診される予定だったがあまりに露骨すぎるのではという理由で却下され再度検討されることになった。
 一時は訪中したニクソン大統領にちなみニクニクとソンソン案が最終案として決定されかけ駐中米国大使に打診までされたのだがそれはそれで米国内の無用な反政府活動の活発化を招きかねないとの不安から当時の駐中大使に突き返され再度の検討を依頼される。よってその案が日の目を見ることはなかった。同時に候補として挙げられたシンシンとジャージャー案は当時ニクソンの懐刀であったキッシンジャー補佐官に敬意を表したものだったがニクニクとソンソン案があっさりと否定されてしまった中国政府はシンシンとジャージャー案を出すきっかけを失う。
 結局中国政府はアメリカ歴代大統領に敬意を表してという名目なら特に問題はないだろうと初代アメリカ大統領リンカーンの名前を使用することを決定し二頭の大熊猫の名前をリンリンとカンカンと名付けただちに訓練を始めたという。
 中国の懸命な努力により二頭はその後名前を呼べば答えるほどにまでなったものの外交発表直前になってリンカーンが初代大統領ではなかったことに気付きさらにはリンカーンの奴隷解放宣言が後々中国にとってはあまりに皮肉な状況を招きかねないという配慮から急遽再度の変更をよぎなくされることとなった。
 慌て果てた中国政府は長年極秘裏に進めていた大熊猫外交計画を担当していた部署を一新しすべての外交計画は白紙となる。当時の担当者が目を白黒させ愕然としたという話は写真誌フォーカスの中国支部担当者が漏らしたジョークとして在中邦人の間だけで流行った笑い話として駐中経験者の間では有名なのだという。
 実は当時大熊猫外交担当部署には対日担当課も存在し田中角栄訪中に備え同様の計画が進展中だった。当時フォーカス中国支部がスクープした記事によれば対日外交大熊猫の名称計画案の第一有力候補はカクカクとエイエイだった。ちなみに第7候補にはマーマーとヨッシャヨッシャがさらに第29案ではマキマキまで上げられていたという話さえあったがスクープ記事の信憑性を損ねかねないという理由により編集長の苦渋の選択でその部分の話はボツになったのだという。
 しかしその記事は奇しくもアメリカ譲渡予定の二頭と日本譲渡予定の二頭の複雑な関係を後日裏付けることとなる。
 対日譲渡大熊猫の名称案は当初対米のニクニクとソンソン案同様にカクカクとエイエイ案が最有力として扱われていた。しかし対等の米国ならともかくどうして日本にまでそんな媚を売らなければならんのかという共産党幹部の反発を買い駐中大使に打診するまでもなくカクカクとエイエイ案はボツとなる。
 そこに急遽登場したのがリンリンとランラン案である。当時日本円を稼ぎまくりテレビ東京の前進である東京12チャンネル買収まで噂された中華料理留円の社長は密かに共産党幹部を訪ねリンリンとランラン案による巨額の寄付をほのめかしたのだという。中国共産党はこの話に飛びつきリンリンとランラン案は一瞬にして最終決定案として他の案を一蹴してしまった。
 当時接待に利用された留円北京支店の店内にはあのCMソングの中国語バージョンが延々と流されていたという。「リンリンランラン留園♪リンリンランラン留園♪留園行って幸せ食べよ〜♪」。そのため日々通いつめた共産党幹部はもちろんのことなぜか党本部の電話交換係りまでがその歌詞を覚えていたという話まで伝わっている。
 しかしその案もまた突然ボツとなる運命だった。日本のテレビCMに出演していたタレントリンリンランランの国籍が実は台湾籍なのではという疑惑が持ち上がったのだ。屈辱的な状況となることを必要以上に恐れた共産党は綿密な調査もせずあっさりと決定を覆し多額の寄付を泣く泣く返却したという。ちなみに留円社長の話によると二頭分で20億円の寄付金は返却されたものの訳のわからぬ数十項目の手数料を差し引かれ同胞ながらさすがに唖然としたと語っている。
 結局中国大熊猫外交部の担当者は途方に暮れたあげく昼食を食いに行きその料理店の店長に対米案と対日案のすべての名称案を書いた紙切れを渡しクッキーに入れて出すように命令する。食後出されたクッキーを中華面の器に投げ込み混ぜこぜにしてから担当者が目をつぶって引いたという。
 その結果残ったのが対米案としてリンリンとシンシンであり対日案としてカンカンとランランであった。リンカーンとキッシンジャーの組み合わせはニクソンがひがむかも知れずまずいのではという危惧もあったがどうせ漢字ではアメリカ人には判るはずもないのだからという理由で対米案はあっさり通ってしまった。
 だがそこで問題になったのが対日案である。リンカーンの尻とは何事だと怒り狂うタカ派の発言を恐れる係官もおりそして留円のランラン案温存では社長がほくそ笑むだけではと悔しがる担当者もあり対日担当部署は田中角栄訪中直前まで議論を白熱させることになる。
 最終的にその議論は結論を出せず詳細を共産党上層部にあげることとなるが会議室に置かれた麻雀卓で会議をしていた気の短い党幹部たちは結局それ以上の議論もせず麻雀牌から取り出した風牌四種を放り投げ決めたという。
 両国に大熊猫が贈られた数年後韓国人のある大熊猫研究者がアメリカのワシントン国立動物園と日本の上野恩賜動物園を訪れ双方の大熊猫に4種類の名前で呼びかける実験をしたという。その結果が現在の彼のサイトに韓国語英語日本語及び中国語でひっそりと発表されている。結果は彼の想像を裏切るまったくつまらないものだったと書かれている。発音の正確性を重要視し各国の通訳を連れ立って行ったもののそれぞれの大熊猫はどの国の言葉でもどの名前でもこれといった反応はまったく見せずただただ笹の葉を食べるだけだったという。
 現在中国は大熊猫外交の失敗を反省しその基本方針転換を行い一方的な譲渡を中止してレンタル譲渡のみとしているが2008年度以降は外交大熊猫ネーミングライツ販売を計画中だという。現在交渉中の企業名が実はすでにリークされているというから興味深い。
 すでに事前予約された数社の希望に応じ十数頭の訓練が開始されているのだという。ビルビルとゲツゲツはすでに名前も覚え二次訓練に進んでいるがリンゴが大の好物という問題もあり現在対応策を検討中なのだと極秘のはずの担当者の自慢げなコメントがネットニュースに流出しているのも有名な話。
 ちなみにラクラクとテンテン及びミキミキとタニタニの訓練は順調に進んでいるという情報もあるがホリェホリェとモンモンそしてラィブラィブとドアドアの訓練は昨年末より急遽停止されているという。中国担当者は一頭あたり15億計30億の支払いを案じアイアイとポドポドそしてナノナノへの変更を急遽検討中だと電話インタビューで明かしている。さすが中国はネット関連の情報が早いと検察庁が現在その情報提供を求めているらしい。


 別役実氏の小説を思い起こす人はいるだろうか。さらには常田富士男の声がもし聞こえてきたら、同じ頃同じNHKFMで同じ番組の常田氏の朗読を聴いていた同世代の人かも知れない。常田氏の別役小説の朗読は堪らないものがあった。

 まぁもちろん内容は比較にならぬが、あの独特な雰囲気はいまだに忘れられないものである。

 ご存知ない方は別役実氏の「虫づくし」をお探し頂きたい。たぶんもうみつからないとは思うが…。
posted at 2006/01/19 09:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 語部修行
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