Laundryで窪塚は何を洗う?

2004年11月27日
先日の「ピンポン」TV放映と窪塚復活のニュースに刺激され、彼の作品をもう一本借りてきた。

Laundry ランドリーLaundry ランドリー
(2002/日本)

監督 森淳一
出演 窪塚洋介(テル)
   内藤剛志(鳩の男)
   小雪(水絵)

頭に傷を持つ20歳の青年と、心の傷を抱える女性のほのかなラブストーリー

その全編では癒しがテーマとされている。
 
20歳にしては幼過ぎる純真な青年は周囲の人々を癒していくというものだ。純真な彼の心が、癒されない人の心を洗い流すということだろうか。

「僕の頭の外と中には傷があるんだ」と自己紹介する青年テル(窪塚洋介)。おばあさんのコインランドリーを任されていた彼は、ある日忘れ物のシャツを届け一人の女性水絵(小雪)と知り合う。

心の中の癒えない傷をいつまでも引きずる彼女は、わざと忘れたのか血の付いたシャツを再びランドリーに残し実家のある遠い街に帰ってしまうが、青年はそのシャツをボロボロになるまで洗った後に彼女に届けようと出かける。

旅の途中に知り合った放鳩を生業とする鳩の男サリー(内藤剛志)と青年と女性はふとしたことから共同生活を始める。
紹介サイト⇒リンク

癒しというメインのテーマには一応満足しているのだが、私は小さなエピソードの一つに惹き込まれた。そのエピソードは鳩の男(内藤剛志)が登場し過去の出来事を青年に話すレストランのシーンである。

まだ映画のエンディングも迎えないうちに、私はそのワンシーンをもう一度、いや何度も繰り返し見たいと思った。

エピソード≪履歴書の証明写真≫
鳩の男は、レストランで彼にご馳走する。男はジョッキでビールを飲みながら過去のサラリーマン時代の話を始めた。財布から出した一枚の証明写真。それはかつて鳩の男が会社員だった頃入社してきた女性のものだと言う。
宴会でカラスの鳴き真似をさせられた女性はたった一週間で退社した。その女性の捨てられた履歴書の証明写真だけを剥がして持っているのだと男は言った。男は彼女に対して何の思いもを語らない。しかし、店員がおかわりのビールジョッキをその証明写真の上に無造作に置くと、彼は雄叫びをあげ店員に殴りかかった。

映画のモチーフによく登場するのは、価値観の比較だと私は思っている。たった一週間会社にいた女性の捨てられた履歴書の証明写真。

彼がどうしてそんな写真を持ち続けているのか。
彼がどうして店員に殴りかかったのか。


 −・−・−・−・−・−

なんの映画だか忘れたが、モンタージュ理論の本で読んだある映画のワンシーンは、その映画を見てもいない私の脳裏に想像だけのシーンがこびりついている。

≪将校の新品の靴≫
捕虜を処刑場に連行する若い将校は、その道すがら水溜りにさしかかる。
将校は綺麗な靴を汚したくなくて水溜りを避けて歩いた。
やがて処刑を終えた将校は帰り道に同じ水溜りにさしかかる。
うつむいた彼は水溜りを避けもせず綺麗な靴を汚し帰っていく。

処刑場への道、その行きと帰りで彼の価値観が変わったことを水溜りで表現しているという。

 −・−・−・−・−・−

偶然にもこの「Laundry」の中で、女性の心理描写を映す水溜りが何度か登場している。
おろしたての新品の靴で新たな生活に踏み切ろうとする女性(水絵)は水溜りに足を踏み入れてしまう。
彼女の表情は一変する。
汚れたのは靴だけではなかった。

一つの靴、一枚のシャツ、青年が壊してしまったガラスのオブジェ、それらの小さな小物や一見価値の無い小道具と見えない何かの価値を比較することで、登場人物の価値観のラインを見せ、またそのラインの間を行き来する気持ちの変わり様でその人間の価値観の変化を観客に暗示する。

何が大切なのか?
何がどんな物よりどれだけ大切なのか?
その大切な物に対する価値観と別の何かに対する価値観の比較。

映画はそんな天秤をいくつも隠している。
たくさんの天秤が隠されている中で、見る人はそれぞれその人なりの天秤を見出していく。

その映画のその天秤のその皿の上に何が載っているのかが見えた時、その映画を見てよかったと思えてくる。

「Laundry」を見て良かったと、私は思っている。
posted at 2004/11/27 01:56 | Comment(12) | TrackBack(4) | 映像批評
この記事へのコメント
価値観の相違…今ぶつかっています。
「Laundry」近日中に観てみようと思います。


Posted by つなみ at 2004年11月27日 18:01
>つなみさん、こんばんわ!
この映画のテーマが価値観の相違と言っているわけではないので、誤解なきように。

でも、見終わった後ちょっと幸せな気分になるのは間違いないと思いますので、断然お勧めします。

大至急レンタルするように!
Posted by 映太郎 at 2004年11月27日 19:58
了解ですm(_ _)m
Posted by つなみ at 2004年11月27日 23:36
>つなみさん、恐縮です…

そんなぁ…、

これで面白くなかったらどういたしましょう…。
不安で不安でOCDの私は眠れなくなりそうです。
Posted by 映太郎 at 2004年11月28日 00:03
この映画、前に見た事があります。特別、出演者のファンというわけではないけれど、ほのぼのとした映像のようでいて、実は色々深いなぁと思います。人には色々と事情があったりしますが、どっか純粋な所を持ち続けたいなぁと思います。心が自然と向かいたがる方向を、大事にしたいなぁとか。
Posted by minan at 2004年11月30日 03:58
実はこの映画、
“仙台しろう”的映画ではとも思いました。

ちょっとオツムの足りない仙台しろう。
彼が来るお店には客が絶えないという話があったそうです。そんな話にあやかって、いつしか彼の絵がお店に飾られるようになったとか。

この“仙台しろう”のお話、
どこまで実話なのか知りませんが、彼が店に居ても文句も言わず、追い出さず、それどころか商品や料理を振舞ったお店のユトリと優しさとが、一般の客をも招き入れる何かと一致していたということらしいのです。

心にユトリを持つ人だけに見える世界。
ならば、この映画も見る姿勢によって全く違ったものになるのではないでしょうか。

鳩を飛ばす時に、
テルが泣いてしまった結婚式のシーンもとても気に入っています。
Posted by 映太郎 at 2004年11月30日 04:35
履歴書の写真のエピソード。maroは「好きになった人だったんだよ」の一言で片付けましたが、私的にはいまだに分かりません。水溜まりの中に時の感情を描く水絵に魅力を感じました。映太郎さんのオススメがなかったら観ていなかったはず。出会いに感謝です♪
Posted by つなみ at 2004年12月06日 20:50
いえいえ、
どういたまして…。

そう言われると、
映画って、巡り合わせなんですね。

つなみに…いやいや、ちなみに、
今日は昨日買ってきた「フィフス・エレメント」を見ています。クリス・タッカーのファンでもなかったんですが、おかしくてハマってます。
Posted by 映太郎 at 2004年12月06日 21:08
かなり前のエントリにどうも。
窪塚くん完全復帰のようで。
もう「I CAN FLY」はしないでね・・・。
TVでやってた、「ロングラブレター〜漂流教室〜」でハマって、「GO」、「ピンポン」と
みたのにこれはまだ。なんだか見たくなりました。
あの事件といい、「魔界転生」といい
ちょっと狂気じみてる雰囲気が絵になってしまって
ピュアな役が現在の彼からは想像つかないですね。

時折、好きな俳優はその人が演じた役のままで
いてほしいと思う事があるんですよ。
たまに何の役をしても地でやってしまって同じに
見える人もいるんですが。

最近、ハリウッドの大物さんはイイヒトほど
悪役でイメチェンというか新境地を開拓しようと
するんですが流行りなんですかね。
ハリソンフォード、ロビン・ウイリアムス、
トムクルーズ・・程度しか知りませんが。
Posted by Ageha at 2005年04月29日 10:13
Agehaさん、おはよ〜さん!
嬉しいですね、元気な顔が見れて。制作発表も見ましたよ。

以前はエネルギーの塊みたいな所がありましたし、それでハジケ飛んじゃったみたいだったけど、力が抜けてちょうどよくなったんじゃないかなぁ。

「魔界転生」系は苦手ですが「ピンポン」系や「ランドリー」系の優しい感じの作品を期待してます。
Posted by 映太郎 at 2005年04月29日 10:45
映太郎さん、お久しぶりです。
うちはなんだかすっかり映画ブログになってしまいました。
(え〜、まあいろいろありまして
一番面白いネタを提供してくれる家族のことが
書けなくなったのが
一番イタイ方向転換の理由なんですが・・・)
確かエントリされてたはずと思い、
舞い戻ってきました。

「同じ月を見ている」では
これもまた窪塚くんの新境地として
「悪役」に挑んだようですが、ちょっとね・・・。

この映画、う〜ん話がうますぎるなとは
思ったんですけど
(その感覚自体が「心が汚れてる」んでしょうか・・・(T_T))
見終わって自分の心も洗われるような気がしました。
Posted by Ageha at 2006年02月06日 17:29
>Agehaさん、お久しぶりです。
 書けなくなった理由、ちょっと気になるなぁ…。

 ところで、お話や映画のドコにナニを感じるかなんて、人それぞれですから、その人なりのソレを見つけられれば、それはソレでいいのではと私は思います。

 何かを感じたら、例えそれが怒りだろうと、或る意味心が動いたことに違いないのだろうし…。話がズレたかな…。

 まぁ、これを機会にまたお越しください。
Posted by 映太郎 at 2006年02月06日 19:06
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