ジオラマチックな惨状が再び

2005年12月28日
 あれは何年前のことじゃったろうか。子供がいたずらに放り投げた電車のおもちゃが、ジオラマの建物をぐちゃりと潰した様な光景が尼崎から延々と中継されていたのは……。

 子供の投げ捨てた飴細工を拾った母親が、埃を一粒一粒呆れながら取り除く様に、ジオラマの人間たちは一人また一人と運び出されていたっけか。

 ジオラマのおもちゃたちにとって、子供なんて或る意味神様の様な存在である。だとすれば今度の全能の子供は、ジオラマで再現した冬景色にまたもや飽きてしまったのか、ぷーっと雪の混じった息を吹きかけ、おもちゃの特急列車をあっけなく吹き飛ばしてくれた。
 


 さすがにJRは前回のバッシングをまだ覚えているらしい。献花台の仕度の早さや会見の態度にその手遅れな危機感がちらほらと表れている。

 素人が第一報を聞いただけでもその主原因が想定を超えた突風だったと想像できる。すでに何年も前の様に思える尼崎の事故の時、その原因が置石だと言わんばかりの会見もあったが、今度はもっと明らかに原因が想像できるのにも関わらず、JRはそれを決して口にせず兎に角謝っている。

 とりあえず“学習効果”はあったらしい。

 ところで、テレビでは事故当時の天気図を気象予報士が振り返るという検証が各局で紹介されている。ただでさえ風が強い地域にかなりの悪天候が重なり、突然の強風も予想されたのでは…とか。

 ふと懐かしいCMを思い出す。あれは公共広告機構の作品だったか、ドライバーに何気なく運転モラルを訴える広告だった。

 住宅街の四つ角を次々と走り抜けていく一台の乗用車。運転席からの景色が映る画面に、一言のナレーションが重なる。

 あなたはいつのまにか…、
  小さな賭けをしていませんか?

 シンプルな広告にさりげない一言のコピーが忘れられない。この広告を始めて見た当時、私はまだ運転免許を持っていなかった。だがそれから何年も後、免許を取りそのCMの風景のような住宅街の四つ角に差し掛かる度に、そのコピーが浮かんだものである。

 実際の現地の風速計はその直前規定値を下回っていたとJRはしきりに釈明しているが、そのデータだけを単純に信じ判断して良かったのかどうか、その判断を誰もまだ口にしない。



 まったく、世の中楽天家が多すぎる。楽天家の判断を信じて切符代を賭けた人々の大損を、胴元はただ残念でしたねとしか言ってくれないではないか。

 あなたは電車に乗る度に、
  大きな賭けをしていませんか?

 電車に乗る度に自分の命を賭けさせられるなんて、そりゃ小さな賭けどころではない。
posted at 2005/12/28 00:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 報道批評
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