亡き記憶のパヴァーヌ

2008年11月23日
 悲しい話を聞いた。

 記憶に障害を負ってしまった作曲家が、晩年自らの作品を耳にしてふと呟いたという。


「素晴らしい曲だね。誰が書いた曲だろうか…」


 誰か、その曲の作者を彼に優しく教えてあげたのだろうか。
 
 以前から好きだったモーリス・ラヴェル。


“ボレロ”や“展覧会の絵”をタイトルとするアルバムを買うと録音時間の穴埋めにかよく挿入されていた。そのせいか“亡き王女のパヴァーヌ”も結局は何度も何度も耳にしていた。


 だが…、作曲家のそんな言葉をいざ知ってしまうと、この曲を聴く度にその悲しき情景を思い描いてしまう気がして、若干の勇気が必要になってしまった。

 第九を聴く度、その初演で観客の喝采がまったく聞こえなかったというベートーベンを思い浮かべて涙してしまう私は、また一曲ある意味での苦手な曲ができてしまった気がする。


 いや…、もしや悲しいと思っているのは我々だけだろうか。もしや彼は、自らの作品をまさに純粋に何度も何度も楽しめたのかも知れない。



「素晴らしい曲だね。誰が書いた曲だろうか」
「そうですね、素晴らしい曲ですね。きっと素晴らしい作曲家が作ってくれたんだと思いますよ、ラヴェルさん」
posted at 2008/11/23 01:47 | Comment(2) | TrackBack(0) | 音楽批評
この記事へのコメント
おひさです。
ラヴェルもベートーヴェンも素晴らしいですね!
天才というと「モーツアルト」というイメージが強いですが、この2人も情熱を持った「天才」だったと思います。
ベートーヴェンの「タクトを歯にはさんで脳で直接音を聞く」ってのは「骨伝導」の先取りですよね!
素晴らしきクラッシックの世界です!!
Posted by しっぽ at 2008年11月26日 13:38
 おひさです。

 万人受けの良いモーツァルトよりもラベルとかサティとかの方が私は好きですねぇ。モーツァルトの楽曲は野菜や牛には良いとかいいますが、まぁ眺めて心地よい写真集と読み解く楽しみを持つ小説のような違いかと…。

 逆にお年寄りには風景を眺めるようなモーツァルトの方がきっとよいのではないでしょうか。
Posted by 映太郎 at 2008年11月30日 21:07
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