花屋さんで売ってるモノって?

2004年11月10日
私はかつて花屋を開いていた。

それ以前に勤めていた花屋の頃も含め、お客さんによく言われた台詞がある。

  −・−・−・−・−・−

「綺麗なお花ねぇ!綺麗だわ〜!すごく綺麗!」

そう言う人は決まって買わない。なぜだか買わないのだ。必ずしもというわけではないが、かなりの確率で買わない人のほうが多いのである。

なぜか?

買う気がないから誉めるのだと思う。

はじめから買う意思を持って店に入る客は、萎れたり傷んだりした花にお金を払いたくないから、努めて荒ら捜しをする。そしてじっくりと見極める。その為なのか、お金を使うつもりの人ほど誉めない。

逆に、買う気もそこそこで、どちらでもいい人ほど、あまりじっくり見ずに、社交辞令の「綺麗」という言葉をなんとな〜く使う。冷やかしているという後ろめたさを打ち消しているのかも知れない。昔の本屋じゃあるまいし、ハタキを振り回して追い返そうなどとするつもりもないのに。きっと遠慮してしまうのだろう。

  −・−・−・−・−・−

もうひとつよく言われた台詞がある。

「花屋さんて、毎日綺麗な花に囲まれていいお仕事ね!」

確かに。綺麗な花に囲まれているのは事実である。

「…(でも、お客さんは知らないだけなんだよ!)…」

客が消えたあとの店内では、必ず話題は同じ方向へと進む。

「それにしても花屋とゴミ屋って、紙一重だよね!」
「うんうん!」

誰も否定しない。

  −・−・−・−・−・−

実際そうなのだ。その様々な作業から出るゴミの量はハンパではない。
◆仕入れた花の葉をかき落とし、◆水揚げに枝の下端を切り落とし、◆輸送中に傷んだ外側の花びらを取り除く。これだけで花が入っていた箱はゴミで一杯になる。

花の水揚げと同時に、◆古い花の手入れに同様の作業を繰り返し、またゴミが出る。

◆夏場のオケの内面はヌルヌルなので洗い流し、◆シンクやドレーンにたまったゴミも捨てなければ詰まってしまう。

やっと仕入れが終わって、いざアレンジメントを作ればやはり◆切った枝はゴミとなり、作り置きの古いアレンジを◆活け直してもやはりゴミが出る。

切花のメンテナンスが終わっても◆鉢花の手入れをすれば…。いい加減省略するが、そんな具合に花からゴミは山と出る。
花とゴミとは紙一重なのだ。

  −・−・−・−・−・−

どんな商売にも外からは見えない苦労があるだろうから、花屋がどんな店よりも大変だと言うつもりはない。

「私の場合」は、花屋の裏を見てきたので、“花屋の裏にも表とは違う裏がある”のです!と言わせてもらっているだけである。

「俺がやってるホニャララ業だって大変なんだぞー!!」
言い分がお有りなら、コメントに書き添えて戴きたい。

  −・−・−・−・−・−

自分で花屋を開いていた頃の話だが、アメリカ留学から戻ったばかりの女の子が言った台詞がある。私はその言葉がとても嬉しかった。今でも忘れない。

女の子は友人へのバースデープレゼントに花束を届けて欲しいとその日はじめてやってきた。こだわりの強い彼女は形や花材まで細かく指定していた。

「なんでもいいから届けておいて。」…そんな注文をする人もいるが、これは結構寂しいものだ。
「…(なんでもいいなら、花じゃなくてもいいのかぁ?)」
口にはしないが、そう思えてくる。

形まで指定した彼女はきっと何をプレゼントするにしても、そんな言葉を使わないタイプだろう。

しかしその彼女が帰り際に、友人が留守だったらと心配して、電話を掛けてから配達するように言ったのだが、私はその指定だけは断った。

「どうしてですか?」彼女は首をかしげた。

配達する者にとっては、留守で出直すのが一番苦労する。
結局私が配達するので、実はその指定とてもありがたいのだ。でも、反面許せない。

下手をすると、届けた時にはすでに送り主に電話で礼を済ませてるなんてこともあるのだ。

「…(そりゃ順序がぁ違うだろう!!
そんなことは絶対させない!!
プライドが許さない!!)」
まぁ、そんなこと彼女には言わなかったが、

「だってサプライズでしょ!電話したらサプライズにならないじゃないですか。」

そう説明する私に彼女は言った。

アメリカ人みたいなこと考えるのね!

「…(ふむ、わかってくれたか。)…」
実際サプライズが好きなのだ。アメリカ風のサプライズが。
なにせアメリカかぶれ気味に育ったからには、英語が話せなくても気分はアメリカナイズドってモノなのだ。

  −・−・−・−・−・−

そのスタイルが気にいってくれたのか、彼女はそれ以来なにかの折には必ず来てくれるようになった。

「…(君もサプライズが好きなんだね…)」

相手の電話番号は必ず書いてくれたが、その番号を使った事はなかった。その分何度も出直したこともあるが、気にはしなかった。

  −・−・−・−・−・−

「花屋の店先に並んでいるモノってなんだと思う?
すべてはただの器なのさ!
人の気持ちの器、単なる器

贈る人の気持ちにピッタリの大きさのね!

隣のケーキ屋さんにも並んでいるだろう。
甘〜い器が。」
posted at 2004/11/10 05:42 | Comment(10) | TrackBack(1) | 雑題雑想
この記事へのコメント
花屋とゴミ屋は紙一重……
なるほど、そうなんですね。
言われてみれば、確かに処理する部分って多そうですもんね。

だけど、それでもいいからお花屋さんでお仕事したいです。
しかし、どこのお花屋さんの求人みても「経験者」の言葉。
どこで経験者になればよいのやら……(苦笑)。

理想と現実のギャップは今までどこで仕事しても目で見て
きているので、ギャップはあって当然って思ってますから。

TBさせていただきました☆
Posted by やすよ at 2004年11月11日 01:59
花屋さんで売っているモノ・・・
それは夢でしょうか・・・・・・
Posted by ミッキー at 2004年11月11日 06:07
確かに!どんな仕事にも表裏はありますね〜。
実は、花屋さんに憧れたことあるんですよ…。

今、自分が仕事探してさすらってしいますが、ほにゃらら業をあえて言うなら、無職は限りなく自分がゴミに近い!(爆)
Posted by KAN at 2004年11月11日 08:55
>やすよさん、こんにちわ!
読んでいただけてよかった。
花屋さんを志す多く人に向け記事にしましたから。

「花屋さんが夢!」と言いながら入ってくる人が、初日の1日で辞めていったのを見たことがあります。
花屋にはなって欲しいけど、すぐに辞めては欲しくなかったので、夢の部分を削り落とす為に、この記事を書きました。

気長に探せば見つかるでしょう。
雇う人の中には、先入観を持った経験者を嫌う人もいますから。

TBありがとうございます。
Posted by 映太郎 at 2004年11月11日 11:33
予告なく、サプライズで、お花をもらったことが、幾度かありますが、大抵、「うれしくなかった?」と聞かれます。
普通に喜んでいるのですが、顔に出ないらしい。気恥ずかしいのを隠して、余計にそうなるのかも知れません。

私は、近頃訳あって、煉炭などを売っておりますが、日々、自殺幇助をしているようで、気が沈みます。秋刀魚でも焼いてくれてれば本望なんですけどね。
Posted by たま at 2004年11月11日 11:38
>ミッキーさん、イラッサイ!
ふむ、
私はギフトをイメージして書きましたが、自分の食卓に飾る花や庭で咲かせる為に買っていく人なら、「夢」ともいえますね。

「元気になってね!」
「結婚おめでとう!」
そんな中身なら「想い」だろうし、

「どんな花が咲くかな?」
「庭をあんな風に…」
そんな中身なら「夢」だろうし…。
Posted by 映太郎 at 2004年11月11日 11:44
>KANさん、おはようございます!
≫「無職は…」・・・・・ぅぅぅ、
半分無職気味の私は半職ということかな?

≫「今、自分が仕事探してさすらっていますが、…」
まぁ、仕事が自分探してさすらっているのでは?

俺の仕事はどこさすらってるんだぁ〜!早く出てこい〜!
Posted by 映太郎 at 2004年11月11日 11:49
>たまさん、おはようございます!
「うれしくなかった?」という言葉も野暮ですねぇ。

「照れ隠し」がよっぽど強かったんでしょうか。

PL法に対処して、
「“さんま専用”です!」と明記したほうがよいのでしょうか。悲しいご時世ですね。
Posted by 映太郎 at 2004年11月11日 11:53
お花屋さん、「綺麗でいいですね〜」っていう気持ちだけではできませんよね。まさに私がそれでしたよ。むか〜し、冬の間の数ヶ月間だけバイトしたことがあるんですが。

菊の葉をそぎ落とすのって、手でやるんですよね。高級なバラのトゲは1つずつハサミで取って、カサブランカの葯も花びらにつく前に取り除いて。地道な作業で、指先は荒れ放題。真冬のお花屋さんは寒くてたまりません。水替えもつらかった〜。芸術的センスもなくて、あっという間に挫折です。

Posted by hanaboro at 2004年11月11日 12:10
>hanaboroさん、こんにちわ!
あらら、
よりによって一番大変な冬だけなんてもったいない。でも冬から春にかけての数ヶ月間は花の種類が一番豊富で、いい時期だったかも知れませんね。

花屋の経験を活かして、花のブログを作っているところは、やはり花にこだわっているってことですね。

シャニダール!シャニダ〜ル!
Posted by 映太郎 at 2004年11月11日 12:22
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Tracked: 2004-11-11 01:51
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